研究課題/領域番号 |
18H01154
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
若林 克法 関西学院大学, 理工学部, 教授 (50325156)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | トポロジカル物質 / グラフェン / 原子膜物質 / ザック位相 / バレートロニクス / 光応答 / SSH模型 / ナノリボン |
研究実績の概要 |
グラフェンや遷移金属カルコゲナイド系物質(TMDC)などの系の厚さが一原子層である原子膜物質では、エッジや表面などの境界面によって、特異な電子物性が発現する。本研究では、電荷・スピンに次ぐ、第三の自由度であるバレーの状態に着目し、その輸送制御性を、円偏向電磁場照射などによる光学的な方法、あるいは熱的な方法によって、実現することを目的とし、その理論整備を行うことを目的とする。さらに、ベリー接続に着目した、新しいアプローチによるトポロジカル材料の設計指針の提案を行い、実験グループに新たな物質探索・合成指針を提示することを目的とする。本研究課題によって、原子膜材料からなる系における、バレー流の生成・制御の新しいアプローチの展開、新たなトポロジカル状態の制御の指針が期待されるだけでなく、原子膜エレクトロニクスデバイスの物理の基礎学理に新たな展開を惹起させる。 2018年度は、次に述べる結果を得た。(1) ザック位相と呼ばれるトポロジカル量が有限になる物質群の探索設計を行い、C3NやBC3といった二次元物質が、ザック位相に起因するトポロジカルエッジ状態を有することを理論モデル計算と第一原理電子状態計算によって解明した。(2) 波動力学的なアプローチを使うことで、SSHナノリボンの解析解の導出に成功した。(3) 六角格子系SSH模型を考察し、高次トポロジカル状態によるコーナー状態を議論した。(4) 実験グループと共同研究を進め、Si材料を基にしたフォトニック結晶素子の作製とその解析について議論を深めた。(5) WSe2酸化過程における電子状態の変化を第一原理電子状態によって解析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、ザック位相を用いたトポジカル物質の設計指針について、その理論的な枠組みの構築に大きな進展があった。また、C3NやBC3などのトポロジカル二次元物質を、理論モデル計算および第一原理電子状態計算によって提案することができた。さらに、グラフェンナノリボンの波動関数の解析的導出で用いられたアプローチを使い、1D SSHリボンのエネルギー固有値と波動関数を解析的に求めることができた。いずれも研究課題において、根幹をなす基礎的な成果であり、今後の研究進捗に大きな貢献をなすものと期待される。解析計算の大幅な進捗に伴い、当初2018年度に計算機を導入予定であったが、2019年度へ後ろ倒しするなど、研究の段取りの入れ替えを行なった。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度得られた研究成果の取りまとめと論文出版を進めるとともに、近年急速に研究が進んでいる高次トポロジカル相について、検討を開始する。さらに、フォトニック結晶など電子系以外の系への理論適用と考察を進め、実験グループへの提案を行う。また、バレートロニクス応用に関する理論研究については、共有結合性有機構造体(COF)などにも検討範囲を広げ、理論解析を行う。
|