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2018 年度 実績報告書

トポロジカル絶縁体表面における量子干渉効果

研究課題

研究課題/領域番号 18H01155
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

川村 稔  国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 専任研究員 (60391926)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワードトポロジカル絶縁体 / 微細加工
研究実績の概要

本研究の目的は、トポロジカル絶縁体表面状態の電気伝導特性に現れる量子干渉効果を測定し、トポロジカル表面状態における電子波動関数の幾何学的位相を直接捉えることである。バルク試料および剥離試料を用いた先行研究では、フェルミエネルギーの詳細な調整が困難であり、試料中にバルク状態と表面状態が混在した状況での研究が行われてきた。本研究では、分子線エピタキシー法により成長した高品質3次元トポロジカル絶縁体(Bi,Sb)2Te3薄膜を用いて量子干渉効果の実験をおこなう。Bi/Sb比を調整することで、フェルミエネルギーがバルク状態のエネルギーギャップ内に存在する試料を用いて実験を行うことができる。さらにゲート電極を用いてフェルミエネルギーを詳細に調整することで、位相干渉長のフェルミエネルギー依存性を調べることができる。。
干渉効果を測定するために、(Bi,Sb)2Te3薄膜試料から直径1 マイクロメートル程度のリング形状の試料を切り出す微細加工プロセスを確立した。当初計画では、酸性エッチング液によるウェットエッチングを想定していたが、実験してみると、膜面方向のエッチング速度が速く、微細なパターンをうまく切り出すことができなかった。そこでアルゴンイオンミリングによるドライエッチングをおこなったところ、線幅100 nm程度の細線を切り出すことができた。アルゴンイオン打ち込みをおこなった結果、室温では基板の一部が伝導的になったが、液体ヘリウム温度まで冷却すると、基板を介した伝導の影響はほとんどないことが分かった。希釈冷凍機を用いて試料を冷却し、磁場を印加してアハロノフ‐ボーム効果の観測を試みたが、これまでのところ、リング形状に対応する磁気抵抗振動は観測されていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

薄膜試料作製およびフェルミエネルギー調整が順調に進み、ゲート電圧を加えることなく、フェルミエネルギーをバルク状態のエネルギーギャップ内に調整することができるようになっている。微細加工は当初計画したウェットエッチングによる方法はうまくいかなかったが、代わりにアルゴンイオンミリングによるドライエッチングによる微細加工ができるようになった。トポロジカル絶縁体薄膜を用いたサブマイクロメートルの試料が安定して作製できるようになった。低温での測定は当初計画よりも遅れているが、試料作製プロセスを確立したことにより、今後は測定の方へ注力して推進していく。

今後の研究の推進方策

これまで測定したリング形状の試料では、アハロノフ‐ボーム効果に対応する磁気抵抗振動を観測することができなかった。現時点で原因を特定することはでいていないが、位相干渉長が試料サイズよりも短い可能性がある。反弱局在による磁気抵抗の解析を併用し、試料の位相干渉長を求める実験を行う。試料サイズを小さくする、あるいは細線試料を周回する干渉経路を用いる等の対策も検討しながら研究を推進していく。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Topological quantum phase transition in magnetic topological insulator upon magnetization rotation2018

    • 著者名/発表者名
      Kawamura Minoru、Mogi Masataka、Yoshimi Ryutaro、Tsukazaki Atsushi、Kozuka Yusuke、Takahashi Kei S.、Kawasaki Masashi、Tokura Yoshinori
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 98 ページ: 140404

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.98.140404

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Emergence of interfacial conduction and ferromagnetism in MnTe/InP2018

    • 著者名/発表者名
      Watanabe R.、Yoshimi R.、Shirai M.、Tanigaki T.、Kawamura M.、Tsukazaki A.、Takahashi K. S.、Arita R.、Kawasaki M.、Tokura Y.
    • 雑誌名

      Applied Physics Letters

      巻: 113 ページ: 181602~181602

    • DOI

      10.1063/1.5050446

    • 査読あり
  • [学会発表] Topology: a new knob for electric switch2018

    • 著者名/発表者名
      Minoru Kawamura
    • 学会等名
      France-Japan Bilateral Workshop on Hybrid Quantum Systems
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Quantum phase transition in magnetic topological insulator studied by transport measurement2018

    • 著者名/発表者名
      Minoru Kawamura
    • 学会等名
      China-Japan International Workshop on Quantum Technologies
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Metal-insulator transition in magnetic topological insulator2018

    • 著者名/発表者名
      Minoru Kawamura
    • 学会等名
      The 34th international conference on physics of semiconductors
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 磁性トポロジカル絶縁体の量子伝導物性2018

    • 著者名/発表者名
      川村稔
    • 学会等名
      産総研-理研 量子技術イノベーションコアWorkshop
    • 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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