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2019 年度 実績報告書

ブロードキャスト型量子鍵配送の研究

研究課題

研究課題/領域番号 18H01157
研究機関国立研究開発法人情報通信研究機構

研究代表者

武岡 正裕  国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所量子ICT先端開発センター, センター長 (70415850)

研究分担者 平野 琢也  学習院大学, 理学部, 教授 (00251330)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード量子暗号 / ネットワーク通信路
研究実績の概要

本研究は、複数の受信者がファイバーで接続された多端子通信路(ブロードキャスト通信路)において、送受信者全員が協力して秘密鍵蒸留を行う新しい量子鍵配送(QKD)プロトコルの実証と、より一般的なネットワーク量子通信路における量子暗号・量子通信へと拡張する理論研究を目的としている。原理実証実験は、1台の送信装置から出た光ファイバーを3dBカプラーで2分岐し、2台の受信装置に接続して実施する。2019年度はプロトコルの原理実証実験を行うための実験装置の整備を進めた。具体的には、高出力光源の特性評価、受信装置のボックス化による安定性の向上、連続動作のためのプログラムの改良等を実施した。光源については、昨年度まで使用していた光源は、最大出力が-6dBm程度しかなく、3dBカプラーで2分岐した場合、2つの受信装置のホモダイン検出器のショット雑音とアンプ雑音の比が限られていた。そのため、約10倍の出力が可能な特注光源を入手して詳細な評価を実施し、CV-QKD用光源として使用可能であることを確認した。
理論研究においては、量子ネットワークにおける多体の秘密鍵・エンタングルメント共有に関する原理的な性能限界を明らかにするための検討を継続し、量子ネットワーク上における他者間のエンタングルメント(GHZ型エンタングルメント)生成レートの原理的な性能限界を示す上界の導出に成功した。特に光損失通信路など、LOCC支援量子通信路容量が明らかになっている1対1通信路から構成される任意の量子ネットワークにおけるGHZエンタングルメント配信の厳密な量子通信路容量を明らかにすることに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

原理実証実験で用いる高出力特注光源は、発振器を内蔵しており、最大ピーク電流200mAのパルス電流を高出力DFBレーザーに注入することができる。パルス幅と繰り返し周波数を変化させて、帯域5GHzの光検出器を用いてパルス光の時間波形を測定し、さらにホモダイン検出器を用いて雑音特性を評価した。その結果、従来よりも10倍以上の出力が得られ、多端子通信路のCV-QKD原理検証実験を実施するための光源の準備が完了した。受信装置のボックス化は、昨年度までは、ファイバー光学部品及びその両端のファイバーを固定しておらず、安定性が十分ではなかった。そこで、これらを全て固定するとともに、クロック生成回路も含めてボックス内に格納し、機械的な安定性の向上を実現することができた。連続動作のためのプログラムの改良については、ハードウェアを含めた問題点の洗い出し作業を進めた。
理論研究については、量子ネットワークにおける多体の秘密鍵・エンタングルメント共有に関する原理的な性能限界を明らかにするための検討を進め、1対1通信路から構成される任意の量子ネットワーク上における多体エンタングルメント(GHZ状態)生成レートの上界導出に成功している。特に光損失通信路など、LOCC支援量子通信路容量が明らかになっている1対1通信路から構成される任意の量子ネットワークにおいては、上界かつ達成可能なレートであるいわゆる量子通信路容量の導出に成功した。一方、QKDにより密接にかかわる他者間秘密鍵の生成レートについては、エンタングルメントと同様の上界が得られると予想されているが、その導出に必要となるprivate stateに対する規格化条件の証明にさらなら工夫が必要であることが明らかとなっている。

今後の研究の推進方策

2020年度は最終年度であるので、プロトコルの原理実証実験を進める。実験はまず、2019年度に準備をすすめた多端子通信路に対応する高出力パルス光源を組み入れた送信装置と、ボックス化した受信装置を長さ20kmのファイバーで接続した量子鍵配送実験を行う。この際、3dBの分岐を入れた状態で実験を行う。次に、分岐のもう一つの出力側に2台めの受信装置を接続して、2台目との量子鍵配送実験を行う。そして、2つの受信装置を同時に運転する実験を行う。これらの実験は、大学キャンパス内で作業を実施する必要があるが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う非常事態宣言が解除されるまでは、大学キャンパス内に原則として入構することが禁じられているため、非常事態宣言の解除後にこれらの実験を進める予定である。理論研究については、今年度の研究で明らかになった他者間秘密鍵蒸留の上界の導出に取り組む。具体的には、private stateに対する規格化条件がうまく導かれるように上界の定義の修正を試みるか、または新たな証明法の検討などを行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] ルイジアナ州立大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ルイジアナ州立大学
  • [雑誌論文] Wavelength division multiplexing of 194 continuous variable quantum key distribution channels2020

    • 著者名/発表者名
      Tobias A. Eriksson, Ruben S. Luis, Benjamin J. Puttnam, Georg Rademacher, Mikio Fujiwara, Yoshinari Awaji, Hideaki Furukawa, Naoya Wada, Masahiro Takeoka, and Masahide Sasaki
    • 雑誌名

      Journal of Lightwave Technology

      巻: - ページ: -

    • DOI

      -

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Multipartite entanglement and secret key distribution in quantum networks2020

    • 著者名/発表者名
      Eneet Kaur, Masahiro Takeoka, Mark M. Wilde, and Wojciech Roga
    • 学会等名
      22nd Annual Southwest Quantum Information and Technology Workshop (SQuinT)
    • 国際学会
  • [学会発表] 量子ネットワークの量子通信路容量について2020

    • 著者名/発表者名
      武岡 正裕
    • 学会等名
      電子情報通信学会2020年総合大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Continuous variable quantum key distribution multiplexed with high throughput coherent channels2019

    • 著者名/発表者名
      Tobias Eriksson, Takuya Hirano, Benjamin Puttnam, Georg Rademacher, Ruben Luis, Mikio Fujiwara, Ryo Namiki, Yoshinari Awaji, Masahiro Takeoka, Naoya Wada and Masahide Sasaki
    • 学会等名
      9th International Conference on Quantum Cryptography (QCrypt 2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] Continuous operation of four-states continuous-variable quantum key distribution system2019

    • 著者名/発表者名
      Takuya Hirano and Ryo Namiki
    • 学会等名
      日米欧量子科学技術国際シンポジウム
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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