今後の研究の推進方策 |
物質開発の効率のさらなる向上を図るために、原子層超伝導薄膜作製プラットフォームの整備と改良を進める。電子状態の空間分布を高精度でマッピングするために、真空紫外レーザー光の集光光学系を作成する。空間分解能向上のために、電子分析アナライザーの電子光学系の調整を行うとともに、レーザーの集光位置の高精度でアライメント機構を作製する。さらに、試料マニピュレーターの振動を評価し、超高真空下での回転導入、5 Kの測定温度、1 um以下の振動低減を満たすことのできる低振動マニピュレーターの開発を行う。電子状態を空間マッッピングから得られる大量のデータを即時に解析するための、高速アルコリズムを作成し、解析システムに実装してプログラムの運用を行い、優れた超伝導特性を示す試料作製条件を抽出することで、原子層高温超伝導体開発の高効率化を目指す。 装置の開発と並行して、原子層超伝導体や関連物質の作製と光電子分光実験を行う。アルカリ金属吸着により超伝導体化に成功した多層FeSe超薄膜と、60 Kの高温超伝導を検証した単層FeSe超薄膜の開発を更に推し進め、基板の種類と薄膜成長条件の最適化とキャリア量の制御により、液体窒素温度を超えるTcを目指す。その一貫として、カルコゲン元素をSに置換した試料の作成を行い、原子層高温超伝導の発現機構に関わる電子状態を見出す。111鉄系高温超伝導体と同じ結晶構造を有するWHM(W = Zr, Hf, La; H = Si, Ge, Sn, Sb; M = O, S, Se, Te)層状物質は最近見出された線ノードを持つ特殊な半金属であり、その層間に電気化学的な方法で原子・分子を挿入して、新しいタイプの超伝導発現を目指す。さらに、これらの物質のMBE薄膜を作製し、表面および層間へのアルカリ金属などの吸着・挿入によってその超伝導体化を目指す。
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