研究課題
2020年3月末で東京大学物性研究所助教を退職し、2020年4月に中央大学理工学部准教授に着任した。着任直後に感染症拡大によるキャンパス閉鎖が発生したが、新しい研究室を立ち上げながら最終年度となる本研究課題の実施に注力した。具体的には、新超伝導体UTe2の磁場角度分解比熱測定結果を論文にまとめ、Phys. Rev. Research誌で発表した。本論文では、比熱の磁場角度依存性から超伝導ギャップのa軸方向にポイントノードを持つノンユニタリースピン三重項超伝導である可能性を指摘した。また、a軸方向の磁場下では超伝導転移温度が目立って抑制されることを見出し、ノンユニタリー状態の秩序変数が容易軸(a軸)方向の磁化により制御されると考えればGL理論の枠組みで定性的に説明できることを示した。実際に、微小なa軸方向の磁場成分により常伝導状態の比熱が有意に変化することも報告した。本結果は、日本物理学会2020年秋季大会のシンポジウムや日仏オンラインワークショップで口頭発表を行った。UTe2は強い磁気異方性を持ち、本研究で開発した試料ステージを頑丈に固定した高感度熱量計が大変役立った。他にも、磁気モーメントの幾何学的フラストレーションに伴うゼロ磁場量子臨界現象が期待されるCeRhSnについて、磁場角度分解エントロピーの実験結果を結晶場計算結果と比較し、Ceの価数変化が非フェルミ液体的性質の原因である可能性を指摘した。これらの研究成果を論文にまとめてJ. Phys. Soc. Jpn.誌に投稿し、2021年3月に同誌に掲載が許可された。他にもPbTaSe2など様々な物質に本装置を応用し、新たな知見を獲得した。装置開発を含む一連の研究成果が評価され、令和2年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Journal of the Physical Society of Japan
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https://www.phys.chuo-u.ac.jp/labs/kittaka/index.html