研究課題
分子性結晶TTF-CAの中赤外パルス励起によるイオン性→中性転移について、分子間電子移動と結合した分子内振動を共鳴励起した場合と、非共鳴励起の場合の転移効率の比較を行った。その結果、共鳴励起では、中赤外パルスの電場の2乗に比例してイオン性→中性転移が起こるのに対し、非共鳴励起では、量子トンネル過程によるイオン性→中性転移が閾値電場以上で非線形に生じることが明らかとなった。中赤外パルス励起の実験は、中性相においても行った。中性相では、分子間電子移動と結合した分子内振動は赤外活性でないため、常に非共鳴の条件となる。測定の結果、イオン性相において非共鳴の条件で中赤外パルスを照射した場合と同様に閾値的な応答がみられた。これは量子トンネル過程による中性→イオン性転移によるものであることが示唆された。スピンパイエルス機構により二量体化したモット絶縁体であるK-TCNQにおいて、分子内振動励起による応答をサブサイクル反射分光により調べたところ、分子内遷移に対応する領域の反射率変化にコヒーレント振動が重畳することがわかった。この振動の解析から、フォノンドレスト状態と呼ぶべき非線形励起状態からの放射が生じていることが明らかとなった。また、分子内振動に共鳴しない条件で中赤外パルスを照射したところ、電場を増強すると量子トンネル過程によるキャリア生成が生じ、それをきっかけとして二量体変位が消失する現象(スピンパイエルス相融解)が生じることがわかった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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