本年度は電子相関効果でバンド幅の繰り込みが生じた強相関ディラック半金属ペロブスカイト型CaIrO3における磁場中の電気伝導特性評価も行った。昨年度までに得られていた単結晶試料を用い、東京大学物性研究所国際強磁場施設において最大55Tの磁場下における磁気伝導を測定した。低温で抵抗率は10T以上で急激に増大し、20T付近でピークを示した後、高磁場領域で減少する振る舞いが見られた。20T付近の抵抗率の温度依存性は絶縁体的で、キャリアの活性化エネルギーが有限値であることが分かった。平均場理論に基づくモデル計算によって量子極限で生じる電荷密度波の秩序変数を調べたところ、20T付近でピークを示すような磁場依存性が得られた。これは実験結果と整合しており、20T付近の絶縁体的状態は電荷密度波等の電子秩序に由来するものである可能性が高い事を示している。 また、CaをSrで置換したペロブスカイト型SrIrO3の薄膜を作成し、表面または界面における空間反転対称性の破れによって生じる非相反磁気伝導の観測を行った。室温で大きな非相反磁気伝導現象が見られ、その大きさはトポロジカル絶縁体の表面状態で生じる非相反磁気伝導に匹敵する大きさであることが分かった。 また層状磁性ディラック半金属であるEuMnBi2において光学測定によって電子状態を調べた。その結果、Mn3d反強磁性秩序と共に電子構造が1eVのエネルギースケールで変化する事を明らかにした。第一原理計算の結果、Mn3d軌道による電子相関効果によってこのような大きなエネルギースケールの変化が生じている可能性が高い事が分かった。
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