研究課題/領域番号 |
18H01176
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田仲 由喜夫 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40212039)
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研究分担者 |
星野 晋太郎 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90748394)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超伝導対称性 / バルク・エッジ対応 / 超伝導近接効果 / 臨界性 |
研究実績の概要 |
1 近接効果による位相干渉効果と奇周波数ペアの理論: 常伝導金属に2つの超伝導電極を付けた系における近接効果の計算をUsadel方程式を数値的に解くことで行い、浸入したクーパー対の干渉効果が局所状態密度に与える影響を明らかにした。従来型のスピン1重項s波超伝導体接合の近接効果では、2つの超伝導体の位相差がπの時に準粒子状態密度が極大になるのに対して、スピン3重項超伝導体接合では奇周波数s波クーパー対が浸入して、位相差がπの時に準粒子状態密度が極小になることが明らかになった。(arXiv:1903.04178) 2 スペクトラルバルクエッジ対応と奇周波数クーパー対の理論: ハミルトニアンがカイラル対称性を持つ系に対して、Green関数により計算されるトポロジカル不変量を周波数zの関数として一般化することでバルクの系で計算された量w(z)と、エッジのある系で誘起される奇周波数クーパー対の総和F(z)がw(z)/z=F(z)という関係が成り立つことを見出した。F(z)をzの関数としてF(z)=W/z + χzのようにスペクトラル分解することで1/zに比例する系数Wとzに比例する系数χの物理的意義が明らかになった。Wはトポロジカル相でのみ零ではない整数となりまたχはトポロジカル相から非トポロジカル相に変化する際に発散的に大きくなることを明らかにした。このχのふるまいを系統的に整理することでトポロジカル臨界性を様々なトポロジカル超伝導体に対して整理することが可能となった(arXiv:1809.05687)。 3 異常近接効果の理論: 拡散伝導領域の常伝導金属・スピン3重項超伝導体接合においては、常伝導金属中の準粒子状態密度が零エネルギーでピークを持つ異常近接効果が存在することが知られている。スピン軌道相互作用によりd波超伝導体の接合においても異常近接効果が生じることを予言した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
スペクトラル・バルクエッジ対応と呼ばれる新しい関形式を導出しさらにトポロジカル超伝導相転移近傍における奇周波数クーパー対の挙動を調べることができるようになったので、空間的不均一性を系統的に調べる方法が確立した。またスピン3重項超伝導体接合で知られている、準粒子状態密度が零エネルギーピークを持つ異常近接効果を、スピン軌道相互作用を用いることでスピン1重項d波からでも作れる可能性を提案することができたので実験での検出可能性が高まっている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)空間不均一についての計算は引き続き行い、乱れの効果を取り入れた計算を実行する。 (2)ペア密度波状態は奇周波数クーパー対を伴うことが広く知られているが、奇周波数ペア密度波の実現の可能性をハバードモデルで解析する。 (3)時間不均一のある系における奇周波数クーパー対実現可能性を検討する。
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