研究課題/領域番号 |
18H01176
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田仲 由喜夫 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40212039)
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研究分担者 |
星野 晋太郎 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90748394)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 奇周波数クーパー対 / 異常近接効果 / バルク・エッジ対応 / トポロジカル量子相転移 |
研究実績の概要 |
奇周波数クーパー対は表面アンドレーエフ束縛状態が存在している場合に大きくなることが、申請者の2007年の研究成果より知られていた。一方で、表面アンドレーエフ束縛状態は、バルクのハミルトニアンの持つトポロジカル不変量により理解できるというバルク・エッジ対応が存在することも知られていた。しかしその奇周波数クーパー対に関するバルク・エッジ対応の理論は存在しなかった。ハミルトニアンにカイラル対称性が存在する場合、バルクのグリーン関数から定義される量が、表面近傍で誘起される奇周波数ペアの総和で表わされることが明らかになった。本研究で得られたバルクエッジ対応は従来のバルクエッジ対応を有限の周波数に拡張したものでスペクトラルバルクエッジ対応と呼ばれる。またこの関係式を用いることで、奇周波数ペアの総和は周波数をzとしたとき1/zに比例する特異的な項とzの多項式で書かれる正則な項から成り立つことがわかり、特異的な項の係数は整数となることも分かった。特にzに比例する項の大きさなトポロジカル量子臨界点で発散的に大きくなることが明らかになり、トポロジカル相と非トポロジカル相の違いを特徴づける。また、トポロジカル量子相転移周辺において、新たな臨界性を持つ状態が現れることを明らかになった。 またスピン3重項超伝導体の基本的モデルであるキタエフ鎖モデルの半無限系あるいは接合系の性質を詳しく調べて、特にトポロジカル相転移近傍における奇周波数クーパー対の性質を明らかにした。トポロジカル相においてはエッジに奇周波数スピン3重項s波が誘起されるが、非トポロジカル相においては奇周波数ペアほとんど誘起されないことが明らかになった。また非トポロジカル相においては、奇周波数ペアは近接効果をほとんど示さないことが明らかになった。さらに臨界点においては奇周波数ペアがキタエフ鎖モデルの奥まで侵入することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
奇周波数クーパー対は表面アンドレーエフ束縛状態が存在しているような場合に大きくなることが、申請者の2007年の研究成果より知られていた。一方で、表面アンドレーエフ束縛状態は、バルクのハミルトニアンの持つトポロジカルな性質より実現するということも知られていた。しかしその両者の関係を結びつけた理論は存在しなかった。2019年度の成果として、この関係が得られたのは、奇周波数ペアとバルクのトポロジカル不変量を関連づけられたという点で予想以上の成果であった。またこの結果から奇周波数クーパー対のスペクトル分解が可能となり、トポロジカル起源の奇周波数クーパー対とそうでないものに分解ができる。さらに奇周波数クーパー対に注目することで、トポロジカル量子臨界点近傍の特徴を明らかにすることができることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
より広い範囲での奇周波数ペアの理論探索を行う。1)奇周波数Gap関数が期待される強相関モデルにおける計算。2)奇周波数ペアが誘起される異常近接効果を、実験で実現可能な従来型超伝導体のPlanarジョセフソン接合での計算、3)Green関数によるより詳細な奇周波数ペアに対する理解を深めるという研究をする必要がある。
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