表面に誘起されるクーパー対とバルクで定義されるトポロジカル不変量を一般化したC数の間に成り立つこと(スペクトラル・エッジ対応)を代表者と分担者は2019年に明らかにした。この対応関係を、本年度は、(1)乱れを伴う場合、(2)カイラル対称性を持たない場合、(3)非超伝導の場合に拡張し、スペクトラルバルク・エッジ対応の概念を深化させることに成功した。また強磁性体・超伝導体接合において温度差によって生じる熱電効果を研究し、奇周波数クーパー対により従来とは異なる符号のゼーベック係数が現れる新奇な熱電効果を予言した。さらに超伝導体・強磁性体接合において、超伝導体に浸入する交換磁場の効果を研究した。界面に存在するABSによって、従来とは符号の異なる磁化の浸入と奇周波数クーパー対の関係を明らかにした。また1次元トポロジカル超伝導の典型的モデルであるKitaev鎖モデルのグリーン関数を研究し、エッジ近傍に不純物散乱が存在する場合のマヨラナフェルミオンに与える影響と奇周波数クーパー対の関係を明確にした。奇周波数電子対による異常近接効果が現れる系として、2次元半導体接合・従来型超伝導体接合を提案した。さらにボゴリウボフFermi面と奇周波数クーパー対に関する研究も行った。通常、超伝導状態においてはフェルミ面は消失するが、時間反転対称性の破れた多軌道自由度をもつ超伝導体では、転移温度以下でもフェルミ面を持つことがある。ここでフェルミ面を構成するのは超伝導状態特有のボゴリウボフ準粒子であり、通常のフェルミ面とは異なるためボゴリウボフ・フェルミ面と呼ばれる。その低エネルギー領域に注目すると、バルクにおいて純粋な奇周波数クーパー対が形成されることが明らかとなった。これは通常の電子系とは異なる機構であり、ボゴリウボフ準粒子のもつ新奇な性質を捉えていることにもなる。
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