研究課題
銅酸化物高温超伝導体の30年に渡る膨大な研究において、アンダードープ領域に広く出現する擬ギャップ状態の解明は、現代物理学における最重要課題の一つである。本研究では、近年、新たな展開を迎えている銅酸化物超伝導体の擬ギャップ問題に対し、最高感度の磁気トルク測定を駆使することで、擬ギャップ状態における相転移現象と対称性の破れを解明することを目的としている。本年度の研究では、前年度に引き続き、5dイリジウム酸化物Sr2IrO4において最近注目を集めている隠れた秩序状態についての研究に取り組んだ。Sr2IrO4は、銅酸化物高温超伝導体の母物質であるLa2CuO4と非常に類似した結晶構造・電子構造・磁気構造を持ち、スピン軌道相互作用によって誘起されるJ = 1/2の反強磁性モット絶縁体となる。更に、そのIrサイトをRhに置換したSr2Ir1-xRhxO4では、反強磁性相よりも高温において「隠れた秩序」と呼ばれる未知の電子状態が形成されていることが議論され始めており、そこでは時間および空間反転対称性の破れた特異な電子状態が指摘されている。これらの特徴は銅酸化物高温超伝導体の擬ギャップ相と酷似しており、その詳細を明らかにし、そこで得られた知見を銅酸化物高温超伝導体の擬ギャップ相と対比することで、反共磁性モット絶縁相近傍における新奇電子状態に関する普遍性の解明と多様性の分類につながると期待される。本研究では隠れた秩序状態における対称性の詳細を解明するため、電子系の面内回転対称性の破れに敏感な超高感度の磁気トルク測定を継続的に進めるとともに、これと相補的で揺らぎ敏感なプローブであるネマティック感受率測定をSr2Ir1-xRhxO4において行い、感受率の発散を伴わない“特異な電子ネマティック状態”が実現していること見出し、これがこれが奇パリティのアナポール秩序であることを明らかにした。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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