研究課題/領域番号 |
18H01179
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
植田 浩明 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10373276)
|
研究分担者 |
道岡 千城 京都大学, 理学研究科, 助教 (70378595)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 磁性 / スピンフラストレーション / カゴメ格子 / 磁化プラトー |
研究実績の概要 |
本研究の対象であるカゴメ格子をもつ秩序型変型パイロクロア格子フッ化物では、アルカリ金属イオンを含むフッ化物のパイロクロア格子上に、一価の非磁性イオンと一種類の三価の磁性イオンを1:3で秩序化させることにより、カゴメ格子を実現している。様々な一価の非磁性イオンを用いることにより、カゴメ格子を含む新規な物質群を開拓しており、イオンの種類が変わってカゴメ格子が歪むことにより、その磁性が変化する。 チタン系に関しては、本課題において三つの新物質を発見し、それらの研究を進めている。その中の一つの物質については、構造解析、物性測定、解析を終えて、論文として報告を行った。いずれの物質についても、強磁場下で1/3磁化プラトーを観測しており、この磁化プラトーが多少の歪の大きさによらずに安定に存在することが示された。 一方、バナジウム系に関しては、新たなカゴメ格子フッ化物の合成には成功していない。しかし、ヒドラジンを含む三つの新物質を発見し、これらの構造と物性の研究を行った。また、パイロクロア格子にリチウムイオンと三価のバナジウムイオンを1:3で置換したときには、それらがランダムに配置することが明らかになった。この物質の磁化過程においても、1/3磁化プラトーのなごりが観測され、パイロクロア格子中の正四面体の四つの頂点のうちの三つを磁性をもつバナジウムが占めており、それらが反強磁性的に結合することにより、1/3磁化プラトーが実現していると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
チタン系については、いくつもの新物質の合成に成功した一方で、バナジウム系について様々な条件で合成を行ったが、新規なカゴメ格子フッ化物を発見することができていない。これは、バナジウムイオンが水分子と結合しやすく、水溶液を用いた合成では結晶水として水が残ってしまうために、合成方法が高温での固相合成とフラックス法に限定されるためである。その代わりに、ヒドラジンを含む三つの新物質を発見し、これらの研究を行ったが、これは当初の計画とは異なるものである。
|
今後の研究の推進方策 |
チタン系に関しては、様々な一価の非磁性イオンにおいて、新物質を発見することに成功した。これは、チタン系のカゴメ格子フッ化物が一価の非磁性イオンの置換に対して安定であることを示している。バナジウムやクロム系は、新たな物質を発見できておらず、イオンの置換に対して、構造が不安定であると考えられる。これまでの研究で、大きな一価の非磁性イオンの方が、歪のより少ないカゴメ格子フッ化物となる傾向にあることが分かっている。今後は構造が安定なチタン系にしぼって、大きなイオンを用いた置換を試み歪の少ないカゴメ格子フッ化物の探索を行い、その物性を測定することにより、歪の大きさと磁性の関係を明らかにする予定である。
|