研究課題
近年、近藤絶縁体SmB6において本来金属で期待される量子振動現象が観測され、トポロジカル表面状態や中性フェルミオンの存在が指摘されている。本研究で目的とするのは、特に中性フェルミオン励起に着目し、中性フェルミオンを実験的に検出するとともにその非自明な準粒子の示す物性現象を解明することである。我々は近藤絶縁体YbB12において電気抵抗ならびに磁気トルクの量子振動現象を観測した(2018年Science誌)。さらに熱輸送および比熱測定により、絶縁体状態であるにも関わらず金属の特徴である残留比熱および残留熱伝導率を観測した(2019年Nature Physics誌)。これは遍歴的な中性フェルミオン励起の証拠を与えるものである。YbB12は強磁場中で絶縁体から金属へと転移するが、磁場誘起金属状態の解明は量子振動や中性粒子の起源を明らかにする上で重要な鍵となる。そこで我々は精密電気抵抗測定を75 Tまでの強磁場中で行った。その結果、絶縁体と金属の両方の状態において量子振動を観測した。量子振動の振動周期や振幅の詳細な解析から、絶縁体と金属の両方の状態において電荷中性の粒子が量子振動を引き起こしていることを明らかにした。さらに金属状態においては中性粒子と電子が共存した前例のない特異な電子状態が実現していることを示した。今回の発見は、中性粒子がフェルミ面を持つという新しい状態を明らかにしたものである。さらに反強磁性を示す近藤絶縁体YbIr3Si7の研究を行い、中性フェルミオン励起の存在を明らかにするとともに、スピン・フロップ転移に伴い中性フェルミオンの励起スペクトルにギャップが開くことが明らかとなった。これは中性フェルミ粒子とスピンが強く結合していること示すものである。また、微細加工を施したYbB12における電気抵抗測定により、トポロジカル表面金属状態に伴う負の磁気抵抗を観測した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
Nature Physics
巻: ー ページ: ー
10.1038/s41567-021-01216-0
Physical Review X
巻: 11 ページ: 011021
10.1103/PhysRevX.11.011021
Physical Review B
巻: 101 ページ: 140407(R)
10.1103/PhysRevB.101.140407
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2021-04-16-0