研究課題/領域番号 |
18H01194
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
比村 治彦 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (30311632)
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研究分担者 |
三瓶 明希夫 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 准教授 (90379066)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 差動回転平衡 / 2流体プラズマ / 非中性プラズマ |
研究実績の概要 |
(1) 第一に、リチウムイオンプラズマの密度を変化させながら、電子プラズマへと重畳させる実験を継続して、実験データの蓄積を行った。リチウムイオンプラズマのイオン密度は、ブリルアン密度限界の1桁下まで上がっており、不安定性が生じるギリギリの密度値になっている。一方で、電子プラズマの密度はブリルアン密度限界より2桁低い値で一定に保っている。この重畳実験で、リチウムイオンプラズマと電子プラズマが巨視的不安定性を起こさないことを確認した。この事実は、2018年度にカナダのサスカチェワン大学の研究者と共同で行ったシミュレーション結果と符合しているように見える。この観測事実の論文化の準備を進めている。
(2) 2018年度末に着想した細い針(以降、ニードルプローブと呼ぶ)をプラズマ閉じ込め用ネスト型トラップの端部に設置して、そのニードルプローブにより切り取られた影の回転角がリチウムイオンプラズマと電子プラズマで異なることになる予測に基づいた差動回転検出実験を開始した。また、この差動回転検出実験準備に並行して、本研究で用いているBX-U実験装置で予想される回転角のシミュレーションも行った。この結果も論文化の準備を行っている。
(3) 初期実験の結果、ニードルプローブで電子プラズマ内で切り取られた影は鮮明に観測できた一方で、リチウムイオンプラズマの影はピントがぼけたように映っている。これをできる限り解消するために、イオン温度を下げることを試みつつ、カメラのズームレンズを別の物に取り換えた計測器系の構築を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 差動回転平衡を原理的に検出できる新しい測定方法を着想することができた。このニードルプローブでの初期実験結果を見ても、プラズマを削っていることは確認できる。
(2) リチウムイオンプラズマと電子プラズマの重畳実験をイオンプラズマ密度を変化させながら一通り実施する事が完了できた。この観測データを、2018年度に共同研究を開始したサスカチェワン大のシミュレーション研究者の計算結果と見比べる限り、イオンプラズマと電子プラズマが一緒に運動しない2流体プラズマ状態は存在すると予想される。
(3) ニードルプローブを実験装置内部に入れるために要した時間は、当初想定時間の5倍におよんだ。これは、ニードルプローブを入れるために、実験装置から円筒型電極群の全てを取り除く必要があったためであり、実質的に装置全体を完全に解体することになった。また、この際に、ターボポンプをオーバーホールしたものの、装置の試運転時にゲートバルが開かなくなった。このゲートバルブの修理は当初予期しておらず、そのために、実験再開が2か月遅れて年度末になった。しかし、全体としてはおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
(1) ニードルプローブを使った差動回転平衡状態の検出を試みる。実験ではリチウムイオンを放出させるベータユークリプタイトのエージングを徹底的に行い、イオン温度の低下に努める。
(2) シミュレーションによる予測では、リチウムイオンプラズマと電子プラズマの差動回転角度は数度である。これを画像で露わにするために、ズームレンズを用いた画像計測を試みる。
(3) 差動回転が判明すれば、その実験データだけをもって、直ちにインパクトファクターの高い雑誌に初期観測結果の論文を投稿する。
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