研究課題/領域番号 |
18H01196
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野上 修平 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00431528)
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研究分担者 |
能登 裕之 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (50733739)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | タングステン / 複合材料 / 延性 / 耐酸化性 / 再結晶 |
研究実績の概要 |
核融合炉ダイバータで使用されるタングステン(W)は、室温から数百度までで生ずる低温脆性と再結晶後の機械特性の劣化、事故時の酸化による放射化Wダストの炉内飛散が課題として指摘されている。本研究では、申請者がこれまで開発した、①延性脆性遷移温度が従来材に比べ低く、再結晶温度が高い、結晶粒微細化W合金と、②室温延性は有するものの、再結晶温度が従来材に比べ低いWフォイルラミネートの利点を融合し、さらに、クロム(Cr)添加などにより耐酸化性を付与することで前述の課題を克服した、耐酸化性結晶粒微細化W合金ラミネートの開発を目的とする。 2019年度は、前年度に製作した4種類の材料(カリウムドープタングステン(KW)、KWにCrを5%ないし10%添加したKW-5%CrおよびKW-10%Cr、KW-10%Crにイットリウム(Y)を添加したKW-10%Cr-0.5%Y)について、高温酸化雰囲気における重量変化などの酸化挙動の評価と、機械特性の評価を実施した。まず、酸化挙動の評価は、熱重量測定装置を用いて、20vol.%の酸素と80vol.%の窒素の乾燥混合気体中において、1000℃で10分から10時間まで実施した。その結果、Cr添加およびY添加により耐酸化性の大幅な向上が見られた。次に、これらの材料について、室温における曲げ試験を実施した。その結果、全ての材料について延性は見られず、脆性破壊した。この点については引き続き改善の可能性を検討するが、現時点では、①延性脆性遷移温度が従来材に比べ低く再結晶温度が高い結晶粒微細化W合金と、②室温延性は有するものの再結晶温度が従来材に比べ低いWフォイルラミネートの利点を融合は、Cr添加した場合には困難であることが示されたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の研究により、延性脆性遷移温度が従来材に比べ低く再結晶温度が高い結晶粒微細化W合金と、室温延性は有するものの再結晶温度が従来材に比べ低いWフォイルラミネートの利点を融合は、Cr添加した場合には困難であることが示された。この原因としては、Cr添加により大幅に硬さが高くなっている点と、圧延などの加工処理が高い硬さにより実現できていない点が考えられ、本研究の計画修正の必要性が示されたものである。これにより、現在までの進捗状況としてはやや遅れていると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2018年度に製作し、耐酸化性の向上が示されたKW-Cr-Y系材料について、①耐酸化性向上のメカニズム検討、②延性改善の可能性の検討とともに、③高硬度かつ低延性の材料を基材とした延性を有するタングステンラミネートの実現可能性についての検討を進める。①については、現状、当該材料ではW-Cr-Oの層とCr欠乏層から成る酸化被膜が形成されており、これにより合金内部での酸化が抑制されたためであると考えられたが、さらなる検討を進める。②については、素材の製作条件の見直しなどにより、圧延などの加工処理の実施可能性を検討する。③については、②の実現ができない場合の対応策であり、冶金学的なアプローチから複合材料学的なアプローチに展開し、高硬度かつ低延性の開発材料を基材として用いて、延性または擬延性を発現するタングステンラミネートの実現可能性を実験的に検討する。③により、これまで開発したKW-Cr-Y系材料を基材とした延性を有するラミネート材料が実現し、本研究の目的を当初とは異なるアプローチにより達成できるものと考えられる。
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