研究課題
高密度核融合プラズマにおけるエネルギー閉じ込めの物理機構を解明するためには、炉心領域での詳細な分布計測による輸送解析が必要不可欠である。電子サイクロトロン波を用いた従来の電磁波計測では、カットオフ密度と呼ばれる密度上限が存在するため、カットオフ密度以上のプラズマ(オーバーデンスプラズマ)での電子温度分布計測が困難となっている。近年、電子バーンスタイン波放射(EBE)計測システムを開発し、LHD、Heliotron J装置においてオーバーデンスプラズマでの有意なEBE検出に成功した。しかしながら、EBEが得られるモード変換過程は未解明のままであり、計測システムへの適用を妨げている。本研究の目的は、EBEと電磁波間のモード変換過程を実験的に明らかにするとともに、高密度エネルギー閉じ込め改善時の熱輸送解析によってEBE計測の有用性を示すことである。令和2年度は、OXモード変換の物理過程を明らかにするため、スラブモデルにおいて有限要素法を用いてO-Xモード変換を解析した。カットオフ層に置いてO-Xモード変換が生じることを確認するとともに、O-Xモード変換の変換効率として約80%が得られ、ポート内径、入射ビームサイズ、入射角の設定が重要であることを定量的に示した。また、ray-tracing計算から得られた最適入射角は解析解と一致した。スラブモデルを拡張し、ヘリオトロンJ装置の3次元磁場配位において、ECHポートの位置からO-modeを入射するモデルの作成方法を考案し、O-mode入射されたECWがカットオフ層で反射される様子を確認した。また、Heliotron J、LHDにおいてオーバーデンスプラズマでの有意なECE信号を観測し、電子温度分布評価に向けたデータが得られた。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究で設計・構築したEBE計測用のマルチチャンネルラジオメータをノイズソースを用いて動作確認も行い、相対感度校正データが取得できている。Heliotron J, LHD装置でのプラズマ実験へ適用し、プラズマ実験において有意な信号強度が得られるとともに、理論から予測されるOX窓において最大の信号強度が得られた。また、相対感度校正から得られた電子温度分布はコア領域においてピークした分布であることやカットオフ密度以下のプラズマで得られた電子温度分布とピーク周波数が異なるといった結果が得られている。令和2年度はO-Xモード変換の理論解析が進むことでモード変換物理の理解が進展しており、概ね順調に進展していると判断した。
EBEはプラズマからの波動として直接測定できないものの、3次元磁場構造を考慮に入れたレイトレーシング計算コード及びfull wave codeを用いることで放射・変換過程についての理論的な特定を行うことが可能である。実験におけるXOモード変換については、これまでの研究により加熱・電流駆動用アンテナ系を活用することでモード変換「窓」位置を特定したので、オーバーデンスプラズマでのEBE分布計測をさらに進めてゆく。Heliotron J装置では、高強度ガスパフ粒子補給によりH-mode遷移といったエネルギー閉じ込め改善が観測されている。高密度領域における電子温度分布をEBEを用いて計測し、熱輸送解析からエネルギー閉じ込め特性と局所輸送との関連性を調べる。特に、周辺領域への粒子補給の効果が如何にコアプラズマへと伝搬してゆくのか、非拡散現象も視野に入れつつ、ラジオメータシステムの長所である高時間分解能(1μsec)を利用して径方向輸送を解析する。LHD装置においてもEBEが観測されたことから、オーバーデンスプラズマでの電子温度分布計測を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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