研究課題/領域番号 |
18H01202
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
鈴木 康浩 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (20397558)
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研究分担者 |
沼波 政倫 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40397203)
田村 直樹 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (80390631)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核融合プラズマ / 不純物輸送 / 拡張MHD |
研究実績の概要 |
これまで、プラズマに侵入した不純物の振る舞いを解明するために、ジャイロ運動論・新古典輸送理論に基づく理論的解析と大規模数値シミュレーションが行われてきた。しかし、多くの計算リソースを用いて大規模数値シミュレーションが行われているが、プラズマ中の不純物の輸送過程・蓄積状況を十分に説明できていない。ジャイロ運動論・新古典輸送理論に基づく解析が実験結果がうまく再現できない理由の一つは、多くの場合、磁気面を基準座標とした局所モデルに基づくためである。一般に、不純物イオンは価数が大きく、質量も水素に比べ重い。不純物イオンの軌道特性は水素、ヘリウムイオンと比べても軌道効果が大きく、磁気面との「ずれ」が大きい。そのために、磁気面上で一定に分布していると仮定できる背景プラズマのイオン・電子の分布に対し、不順分布イオンの分布が磁気面とずれている可能性が大きい。加えて、局所モデルでは背景プラズマ分布の影響を含めることが難しい。もし、不純物分布が磁気面形状と大きく異なるならば、不純物がもたらす背景プラズマ分布の変化を矛盾なく取り込む必要があるが、磁気面を基準座標とした局所モデルでは不可能である。 そこで本研究では、グローバルな背景プラズマ分布の変化と磁場構造の影響を、拡張 MHD コードに不純物分布を取り込むことで世界で初めて再現し、拡張 MHD コードの結果を初期値としてジャイロ運動論・新古典輸送理論の局所モデルシミュレーションを行う、新しい革新的マルチスケール反復スキームを開発を開始した。 開発した拡張スキームは、実験結果と比較して検証と検討を行う。そのために、プラズマ中の不純物分布を2次元かつ高精度で計測できる装置の開発も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、これまで開発してきた拡張MHDコードの改良を行った。プラズマ中の不純物は、放射冷却によりプラズマを冷却するため、拡張MHDの方程式に、不純物がプラズマを冷却する効果をモデル化した項を追加した。次に、拡張MHDはプラズマを一流体として取り扱う。その場合、実効電荷数は背景プラズマのイオンと電子で釣り合うように定義される。そこで、背景プラズマイオン+不純物イオンとしてイオン電荷を取り扱い、実効荷電数を定義できるようにコードを改良した。一方、不純物輸送シミュレーションについては、拡張MHDコードで得られた磁気面量として定義されない不純物分布や温度・密度分布を初期値として計算できる改良を施した。ジャイロ運動論・新古典輸送理論のコードに磁気面上で温度・密度を一定として与える代わりに、座標磁気面上に拡張MHDコードから得られた温度・密度分布を直接マッピングすることで、磁気面量として定義されない温度・密度分布を入力する改良を行った。
開発した反復スキームは、大型ヘリカル装置実験の結果と比較する。そのため、プラズマ中の不純物分布を2次元で計測できるよう、プラズマの輻射損失分布を計測する軟X線計測機の改良を行った。当初、AXUVフォトダイオードを用いて輻射分布を計測する予定であったが、ノイズに対する影響が大きいと判断されたため、シンチレータ式の軟X線検出器を用いることとした。プラズマからの輻射損失分布を詳細に計測するために、新しいシンチレータと多チャンネルの光ファイバーを整備した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年・令和元年度は、平成30年度に引き続き拡張MHDコードの改良と、ジャイロ運動論・新古典輸送理論コードとの結合による反復スキームの開発を進める。加えて、テストケースを設定し、反復スキームが正常に動作する事、収束することを確認する。並行して、大型ヘリカル装置実験の過去のデータから、不純物が多く蓄積される場合、不純物が吐き出されてほとんど蓄積しない場合を検討課題として抽出し、開発した反復スキームにより考察する。そのことにより、不純物輸送の振る舞いと、蓄積・掃き出しに至る過程を考察する。
開発したコードの検証のために、大型ヘリカル装置実験で不純物計測を並行して行う。プラズマ閉じ込め磁場構造と不純物輸送の関係を考察するために、磁場配位を系統的に変化させ、不純物分布を詳細に計測する。計測された結果は、反復スキームの入力として利用し、また、結果の検証と検討にも用いる。
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