研究課題/領域番号 |
18H01208
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
金 賢夏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (20356893)
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研究分担者 |
寺本 慶之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (00635328)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 低温プラズマ / 触媒 / 気固界面反応場 |
研究実績の概要 |
今年度の研究では、平板メッシュ電極間に充填した触媒表面に形成される負極性ストリーマの特性についてICCDカメラを用い詳細を調べた。負極性パルス電圧を印加した直後には高電圧電極近傍にグロー放電が生じた後に接地電極から陰極に向かってストリーマが進展する放電モードを初めて観測した。露光時間を十分長くした場合いずれもストリーマが触媒層を横断する形を示すが、ナノ秒刻みの時系列の観測により接地電極からのストリーマが観測できた。これは正極性のストリーマと同様な機構で進展するため、負極性パルスでは反対方向になっていることも明らかにした。2次元の流体モデルによるシミュウレーションからは、触媒ペレットと接地電極間に発生する強い電界(~200 kV/cm)がストリーマの進展に大きく影響していることが分かった。ストリーマの進展速度は印加電圧に依存し、印加電圧14kVで700 km/s前後の進展速度を示した。触媒反応ではオゾンによるCOの常温酸化をモデル反応として単一金属の触媒と合金触媒の性能を評価した。単一触媒としてはAgが有効であり、合金にした場合CO酸化活性が低下する触媒が多い中Ag-Pdの合金触媒ではそれぞれの単独よりも高い性能を示す協調効果が得られた。FTIRを用いたその場観察などにより、COの吸着サイトが変わることや反応中間生成物の蓄積を抑制が強調効果のキーであることを明らかにした。 触媒調製における酸化・還元処理手段としてプラズマジェットを検討する中、これまでのサイズ限界(8mm)を超えられる新しい構造を取り入れた大口径プラズマキャンドルを開発した(特許出願)。プラズマキャンドルは直径25 mmのサイズで発生できることを確認した。これは当初の予定に含まれていないセレンディピティに当たる研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、低温プラズマとナノ粒子で修飾した触媒の相補的融合における気固界面反応場の基礎的特性を解明し、新規低温触媒反応場の具現化と同時に応用技術として低炭素水素社会への展開に向けた道筋を確立することを目標としている。低炭素水素社会の実現に向けた具体的な二つの目的反応として、ハーバーボッシュ法に代わる新規中小規模の「アンモニア合成技術の確立」と温暖化ガスの削減と有効利用を狙った「CO2の資源化技術」の水素化反応を両軸とする。プラズマに適した触媒材料の開発は、本研究の重要な基盤要素である。ナノ材料で修飾した触媒表面と沿面で進展するストリーマの気固境界面で生じる相互作用は未開拓の研究分野ではあるものの、新規反応場としてのポテンシャルが極めて高い。今年度はこれまで検討例がなかった触媒層における負極性パルス放電プラズマの基礎特性を調べ、接地電極から陰極に向かって進展するプラズマモードを初めて観測できた。 有害汚染物質の代表である一酸化炭素をプラズマにより生成したオゾンによる室温触媒酸化を検討し、Ag-Pdの合金触媒が有効であることを明らかにした。この複合触媒は従来の熱触媒反応では活性が低く、オゾンを用いた常温酸化に特化した材料であることを明らかにした。本研究の当初に目標としていた、プラズマ触媒の相互作用の解明の基礎研究と、新規触媒開発といった実用的な面でも順調に研究成果得られており、今年度もこれを維持していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
二年目(2019年)の研究では、プラズマ環境に適した触媒の探索とモデル反応を用いた活性評価をより広く展開しる。今年度は当初予定していたモデル反応の一つである二酸化炭素(CO2)の資源化に向けたプラズマ触媒の検討を始める。また、窒素固定においては、温度、湿度、触媒の有無などの項目について評価を行い、エネルギー収率と時空収率の検討を進める。触媒表面のサフェースストリーマについては、韓国機械研究院(KIMM)の研究グループと連携しながら、シミュウレーションと実験による計測結果の比較を行う。 大口径プラズマキャンドルについてはまだ基礎特性のデータが皆無であり、既存の小さい口径のジェットまたはアアレ化したプラズマジェットとの比較検討も必要である。今年度の研究ではガスの種類(He, Ar, Ne, Xeなど)、印加電圧、シュリーレン法による気流の可視化などを行う予定である。また、触媒の酸化還元などの表面改質などへの応用について試行的な検討を行う。また、東京工業大学の竹内先生との連携によりプラズマキャンドルと従来型のプラズマジェットの基礎特性の比較検討を加速する。
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