研究課題/領域番号 |
18H01212
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横井 喜充 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50272513)
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研究分担者 |
政田 洋平 福岡大学, 理学部, 准教授 (30590608)
滝脇 知也 国立天文台, 科学研究部, 助教 (50507837)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超新星爆発 / 乱流 / 対流 / 非平衡 / プリューム / モデリング |
研究実績の概要 |
星の進化とその最終段階である超新星爆発を支配する乱流現象を解明し,現象論的ではない自己無撞着な理論モデルを構成した.近年,超新星爆発の研究は大規模数値シミュレーションを用いて大きな発展を遂げつつあるが,内部の乱流現象の理論的解明にはほど遠い.従来の乱流モデルは,混合距離理論に代表されるように,経験的にその場限りで与えられるものにとどまっている.本研究では,まず強非線型非一様な乱流の理論を星の進化を記述する方程式系に適用し乱流熱流束 などの相関を解析し,その結果を用いて,基礎方程式に基づいた乱流モデルを構築した. この理論モデルはローカル・シミュレーションでまずテストされ,その後グローバル・シミュレーションに採用された.この過程を踏むことで,これまでの計算では解像できなかった乱流の効果を自己無撞着なモデルを通じて取り入れ計算することができた. 恒星表面での放射による強い冷却によって生じる沈降プリュームは,恒星内部での質量・熱輸送を大きく促進する.このプリュームによる乱流質量輸送や熱輸送は,混合距離理論に基づく従来の勾配拡散型モデルでは再現できない.本研究では,乱流の非平衡効果を組み入れたモデルを時間・空間二重平均の枠組みで構成した.この非平衡モデルで,恒星内部での質量・熱輸送をよく再現できた.さらに,二重平均の枠組みで,乱れのコヒーレント成分であるプリュームとインコヒーレント成分であるランダム乱れとの間のエネルギー交換を決める要素を特定した.プリュームの速度勾配とランダム乱れ応力の結合が,恒星表面での冷却と恒星内部でのエネルギー散逸とを繋ぐ鍵となることを初めて示した. これらの結果から,非平衡モデルを超新星のモデルとして最適化し超新星爆発の条件を検討することが可能となった. 以上の成果は,それぞれに関連する現象への適用として,業績に上げる論文として公刊あるいは投稿されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強い圧縮性の電磁流体方程式の乱流を理論的に解析することで,通常の混合距離と勾配拡散近似を超えた乱流モデリングを考察した.恒星対流中で普遍的に観測されるプリュームを伴う乱流の質量流束や熱流束は,従来の乱流モデルでは説明できなかった.理論解析から得られた,時間・空間の二重平均と非平衡効果を組み入れた乱流モデルを構成した. このモデルを,超新星も含む恒星内部の強い圧縮性対流乱流にの大局的数値計算と局所的数値計算に適用している.まず,モデルによる計算と局所的直接数値計算の結果を比較することで,プリュームに伴う乱流流束を新しい乱流モデルでよく再現することを示した.乱流輸送への非平衡効果を取り入れたこのモデルを大局的数値計算に用いることで,超新星の乱流輸送の問題を自己無撞着に解くことが可能になり,爆発条件を含む超新星の物理を理解することが可能になると期待される.
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今後の研究の推進方策 |
局所的直接数値計算との比較で,その妥当性が検証された非平衡乱流モデルを,大局的数値計算に適用する.乱流効果を表すモデルの表現では,本来の方程式が持つエネルギーなどの保存性を保証する自己無撞着なモデルを用いる必要がある.それに加えて,超新星爆発の大局的数値計算では,衝撃波に伴う強い圧縮性の効果や,放射による冷却,核反応の結果などを正しく組み入れる必要がある.新モデルをできるだけ簡約した自己無撞着な低次元のモデルに還元し,その計算不可の小さい簡約モデルを用いて,超新星爆発の条件を含む様々なパラメータの検討を行う.それらの研究を通じて,超新星爆発の物理をさらに理解する.
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