研究実績の概要 |
昨年度からの研究に引き続き、ニュートリノ輻射磁気流体ー数値相対論コードの開発を行ってきた。特に本年度前半は(1)高解像度衝撃波捕獲法に基づく相対論的磁気流体リーマンソルバーの実装、(2)スーパーコンピューター富岳の使用に向けた最適化を中心に行った。(1,2)についての概要を記す。 (1)重力波及び電磁波対応天体の観測が急速に進んだことから、数値相対論シミュレーションデータと観測データを直接比較し、重力波源で何が起こったのか物理的解釈をすることが可能な時代になった。すなわち、観測データとの比較に耐えうる定量的に信頼性の高いデータをシミュレーションにより生成することが至上命題となっている。一方、我々のグループを含め数値相対論コードに実装されている高解像度衝撃波捕獲法(以下、リーマンソルバーと呼ぶ)は、Harten, Lax, Leerによって約40年前に開発されたものであり、リーマン問題を考えた時にリーマン扇の内部構造を考慮しないという近似を採用しているため、非常に散逸的であることが知られている。すなわち、既存の数値相対論コードから生成されたデータの定量的信頼性には疑問が残る状況である。そこで、リーマン扇の内部構造を考慮し、流体、磁気流体問題で現れる種々の波を正確に捕獲できるリーマンソルバーHLLC/HLLDを実装した。種々のテスト計算を経て、実装が完了したことを論文として近日投稿する予定である。本リーマンソルバーを実装している数値相対論コードは世界的に見ても我々のグループだけであり、最も品質の高いシミュレーションデータを生成できると自負している。 (2)2022年現在スーパーコンピューター世界ランク1位である富岳(理化学研究所)を使用した連星中性子星合体の大規模シミュレーションに向けて最適化を完了した。現在、サイエンスランを行っている。
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