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2018 年度 実績報告書

PeV 天体からの高エネルギーマルチメッセンジャーの理論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18H01215
研究機関京都大学

研究代表者

井岡 邦仁  京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (80402759)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード高エネルギー天体 / ブラックホール / マルチメッセンジャー / ジェット / 宇宙線
研究実績の概要

PeV天体の一つの候補にガンマ線バーストのジェットがある。最近、重力波イベントGW170817の発見によって、ついに本格的なマルチメッセンジャー天文学が始まり、連星中性子星の合体によってショートガンマ線バーストのジェットが放出されたことがほぼ明らかになってきた。我々もこの大きな進展に対し様々な貢献をした。まず、連星中性子星合体からのジェットが、どのような電磁波対応天体として観測されるかを検討した。観測されたガンマ線バーストが大変暗かったので、ジェットを横から見ている off-axis モデルを提唱し、現在では標準的な理解となっている。観測された残光放射からジェットが放出されたことは確実となり、連星中性子星の合体に伴って飛散する物質をジェットが突き破って出てきたことを意味している。ジェットがどういう強さなら飛散物質を突き破ることができるかを見積もり、今回放出されたジェットは普通のガンマ線バーストと同程度の強いジェットでなければならないことが分かった。ジェットは飛散物質の中でも、高エネルギーガンマ線やニュートリノを生成するが、ガンマ線は吸収され、ニュートリノだけが観測できる。これは、最近の高エネルギーニュートリノの観測から示唆される、PeV ガンマ線は天体から出てこれないのではないか?という隠れた PeV 天体仮説とも関係する。また、ジェットは、特に長時間続くと、飛散物質を加熱し、光赤外線で観測された巨新星・キロノバにも影響を与えることを指摘した。off-axis ジェットからの放射が、飛散物質に散乱されてガンマ線バーストになる可能性も指摘した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マルチメッセンジャーの観測が進み、当初考えていたことを超える予想外のことも起こっているが、それらにしっかり対応して、本テーマに沿った成果を上げている。

今後の研究の推進方策

PeV天体の一つの候補にガンマ線バーストのジェットがある。最近、重力波イベントGW170817の観測によって連星中性子星の合体とショートガンマ線バーストについての知見が豊富に得られるようになってきた。特に、連星中性子星の合体に伴って飛散する物質については、(おそらくr過程元素の放射性崩壊に伴う)放射が観測されたので、その性質が比較的良く分かってきた。また、ガンマ線も観測され、さらに残光の観測からもジェットの存在がほぼ確実になった。ジェットからのガンマ線が観測されるには、ジェットが飛散物質を貫く必要がある。そこで、飛散物質内のジェットの伝搬を数値的および解析的に調べることで、ジェットが飛散物質を貫くことのできる条件を求める。これまで飛散物質の運動を考慮して条件を解析的に求めた研究はない。これにより、GW170817でのジェットの性質に制限を加える。また、その伝搬中にできる高温のコクーンは、飛散物質に比べて速度が速いので、その後周りの星間物質と衝撃波を起こしPeV宇宙線の起源になる可能性がある。上記の計算に加えて、コクーンの質量や速度を求めることで、高エネルギー粒子の加速を調べるための基礎を構築する。また、これらの物理量は、コクーンからの冷却放射を計算するためにも必要になる。コクーン放射を近い将来観測するための理論的な予想を行う。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件、 招待講演 6件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] ペンシルバニア州立大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ペンシルバニア州立大学
  • [国際共同研究] テルアビブ大学(イスラエル)

    • 国名
      イスラエル
    • 外国機関名
      テルアビブ大学
  • [雑誌論文] Can an off-axis gamma-ray burst jet in GW170817 explain all the electromagnetic counterparts?2018

    • 著者名/発表者名
      Ioka Kunihito、Nakamura Takashi
    • 雑誌名

      Progress of Theoretical and Experimental Physics

      巻: 2018 ページ: 043E02

    • DOI

      10.1093/ptep/pty036

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Is the Macronova in GW170817 Powered by the Central Engine?2018

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Tatsuya、Ioka Kunihito、Kisaka Shota、Nakar Ehud
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 861 ページ: 55~55

    • DOI

      10.3847/1538-4357/aac4a8

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] First ALMA Light Curve Constrains Refreshed Reverse Shocks and Jet Magnetization in GRB 161219B2018

    • 著者名/発表者名
      Laskar Tanmoy、Alexander Kate D.、Berger Edo、Guidorzi Cristiano、Margutti Raffaella、Fong Wen-fai、Kilpatrick Charles D.、Milne Peter、Drout Maria R.、Mundell C. G.、Kobayashi Shiho、Lunnan Ragnhild、Duran Rodolfo Barniol、Menten Karl M.、Ioka Kunihito、Williams Peter K. G.
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 862 ページ: 94~94

    • DOI

      10.3847/1538-4357/aacbcc

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Scattered Short Gamma-Ray Bursts as Electromagnetic Counterparts to Gravitational Waves and Implications of GW170817 and GRB 170817A2018

    • 著者名/発表者名
      Kisaka Shota、Ioka Kunihito、Kashiyama Kazumi、Nakamura Takashi
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 867 ページ: 39~39

    • DOI

      10.3847/1538-4357/aae30a

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Transejecta high-energy neutrino emission from binary neutron star mergers2018

    • 著者名/発表者名
      Kimura Shigeo S.、Murase Kohta、Bartos Imre、Ioka Kunihito、Heng Ik Siong、M?sz?ros Peter
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 98 ページ: 043020

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.98.043020

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Study of Black Holes and Multi-Messenger Astronomy with CTA2019

    • 著者名/発表者名
      井岡邦仁
    • 学会等名
      物理学会
    • 招待講演
  • [学会発表] Scattered Short Gamma-Ray Bursts as Electromagnetic Counterparts to Gravitational Waves and Implications of GW170817 and GRB 170817A2018

    • 著者名/発表者名
      木坂将大、井岡邦仁、樫山和己、中村卓史
    • 学会等名
      物理学会
  • [学会発表] Jet in Electromagnetic Counterparts to GW170817?2018

    • 著者名/発表者名
      Kunihito Ioka
    • 学会等名
      The 3rd PANDA Symposium on Time Domain Astronomy and first results from Insight-HXMT
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] An Off-Axis Jet in Electromagnetic Counterparts to GW1708172018

    • 著者名/発表者名
      Kunihito Ioka
    • 学会等名
      The workshop "The extreme Universe viewed in very-high-energy gamma rays 2018"
    • 国際学会
  • [学会発表] Recent Progresses in Gravitational Wave Astrophysics2018

    • 著者名/発表者名
      井岡邦仁
    • 学会等名
      初代星・初代銀河研究会2018
    • 招待講演
  • [学会発表] Jet in Electromagnetic Counterparts to GW1708172018

    • 著者名/発表者名
      井岡邦仁
    • 学会等名
      高エネルギー天体現象の多様性
    • 招待講演
  • [学会発表] Electromagnetic Counterparts to Gravitational Waves and Gamma-Ray Burst Jets2018

    • 著者名/発表者名
      Kunihito Ioka
    • 学会等名
      Second international workshop: Particles, Gravitation and the Universe
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] The Spectrum of a Fast Shock Breakout from a Stellar Wind2018

    • 著者名/発表者名
      Kunihito Ioka
    • 学会等名
      10th NAOJ DTA symposium: Stellar deaths and their diversity
    • 国際学会
  • [学会発表] Spectral puzzle of the Off-Axis Gamma-Ray Burst in GW1708172018

    • 著者名/発表者名
      Kunihito Ioka
    • 学会等名
      Aspen Winter Conference: Gravitational-Wave Astrophysics with Populations
    • 国際学会
  • [学会発表] 重力波観測レビューと HiZ-GUNDAM で目指すサイエンス2018

    • 著者名/発表者名
      井岡邦仁
    • 学会等名
      HiZ-GUNDAM 連絡会
    • 招待講演
  • [備考] google scholar

    • URL

      https://scholar.google.com/citations?user=DcPm4A8AAAAJ&hl=en

  • [備考] 井岡邦仁のホームページ

    • URL

      http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~kunihito.ioka/

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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