研究実績の概要 |
中性子星合体等で起こる速い中性子捕獲過程(rプロセス)は鉄のピークより重い元素の合成に重要な役割をはたす。元素組成比における質量数130周辺のピークはrプロセスが起源であることが分かっている。元素合成の流れは元素合成が起こる環境での中性子密度と(n,γ)反応断面積の影響を受ける。元素合成ネットワーク計算によるとピークの形状は、130Sn(n,γ)131Sn反応率によって大きく変化するが、この反応率の実験による決定は行われていない。本研究では理化学研究所RIビームファクトリーで作られた約20MeV/uの130Snビームを用いた逆運動学の(d,p)反応(2H(130Sn,p)131Sn)を測定することで130Sn(n,γ)131Sn反応率の導出を行う。(n,γ)反応の直接捕獲成分については漸近正規化係数(ANC)法を用いて導出する。共鳴捕獲成分については測定で求めた共鳴状態のエネルギー、スピン・パリティ、分光学S因子、γ崩壊-中性子崩壊幅比を実験で決定して導出する。130Sn(n,γ)131Sn反応率を求め、質量数130領域におけるrプロセス元素合成を明らかにする。 本年度は実験準備を行った。実験に使用するシリコン検出器とCsI(Tl)検出器のアレイを組み立てて、ビームを用いた性能評価を行った。その結果、目的の性能を満たすことを確認した。GEANT4を用いたシミュレーションを行い、問題点の洗い出しを行った。Surry大学で行われたCD2標的作成方法を参考にして、標的として用いる0.3mg/cm2厚の薄いCD2標的の作成を試みた。
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