研究課題/領域番号 |
18H01222
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
飯田 崇史 筑波大学, 数理物質系, 助教 (40722905)
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研究分担者 |
小川 泉 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (20294142)
吉野 将生 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (30789938)
鎌田 圭 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (60639649)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 無機シンチレータ / 波形弁別 / 粒子識別 / ヨウ化カルシウム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、発光量の大きいヨウ化カルシウム(CaI2)結晶シンチレータを開発し、暗黒物質や二重ベータ崩壊探索実験に応用することである。宇宙の歴史を理解する上で欠かせないこれらの実験の高感度化には、一般的に「低閾値・高分解能、 大型化、 低バックグラウンド」の3本柱が重要となる。申請者は先行研究においてCaI2 結晶作成に成功し、NaI(Tl)の2.7倍という大発光量を得て、低閾値・高分解能が達成可能なことを示している。本研究では3年間で残る低バックグラウンドと大型化に道筋をつける。 2年目は、低バックグラウンド化で非常に重要となるCaI2結晶の波形弁別特性の調査を行った。ブリッジマン法で作成したCaI2結晶を、5mm×5mm×1mm程度に切り出し、光電子増倍管(Hamamatsu R7600U-200)と組み合わせたセットアップを、湿度3 %以下に保持されたドライルーム内に用意した。これに上から241Am、137Csの放射線源を用いて、アルファ線、ガンマ線を照射した。光電子増倍管からの信号波形は0.4 GHzのサンプリングレートで波形デジタイザ(USB wave catcher)を用いて、それぞれ1万事象ずつ取得した。 アルファ線とガンマ線を当てたデータ1万事象の平均波形を比較した結果、波形の最初200 nsに大きな違いがみられる一方で、波形後半はほとんど変わらないことが分かった。事象ごとの波形の違いを定量化するために、波形前半200 nsと全体の比を取ったRatioというパラメータを定義し、100 keV以上の領域で、きれいにRatio分布が分かれることを示し論文(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A)にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な目的は、CaI2結晶の大型化と低バックグラウンド化である。2年目の今年は低バックグラウンド化のための波形弁別能を調査したが、当初の期待以上に優れた波形弁別能を有していることが分かり論文を執筆した。 一方で大型化に関しては、業者と協力し1インチの結晶を作成し、10mm角×2mm厚程度のサイズに加工したものを、潮解しないようパッケージングすることに成功している。大型化に向けた重要な一歩であり、本研究はここまで順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度はCaI2結晶に対して、低バックグラウンド化に重要となる波形粒子識別能の研究を行った。その結果、CaI2は既存のシンチレータの中でも、高い識別能を持っていると考えられ、今年度さらに詳細な解析を進めていく。一方で二重ベータ崩壊探索に用いる結晶の開発としては、2インチ以上の大型化や結晶の高純度化等も重要な開発項目であり、今年度はそれらを進めていく予定である。 さらに96Zrや150Nd等、別の二重ベータ崩壊核種を含むシンチレータの開発も並行して検討を始めたい。
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