研究課題/領域番号 |
18H01223
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
増渕 達也 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (20512148)
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研究分担者 |
越智 敦彦 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (40335419)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | MPGD / ガス検出器 / 高抵抗フォイル / ミューオン |
研究実績の概要 |
2018年度はμ-Resistive WELL検出器に欠かせないスパッタリングを用いたDiamond-Like-Carbon(DLC)高抵抗層の安定した製造技術の確立、特に抵抗値の安定性に起因するパラメータの理解について研究を行った。高抵抗層の製造で抵抗値が安定しない問題は様々な要因が関係していると考えられており、特に今年度はスパッタリングを行う土台であるカプトンのタイプとスパッタリング時間(厚み)毎にカプトン中に含まれる水分量を変えたサンプルを作成し、スパッタリングを行うことでどのように抵抗値に影響が出るかを調査した。 カプトンはHNタイプとENタイプという他のガス検出器でよく用いられる素材を利用し、素材による安定性の違いを測定対象とした。今回用いた10cm×10cmサイズで50μm厚みのカプトンでは200℃で約20分の乾燥でほぼ水分量はなくなることがわかり、室内では20分晒すことにより水分量は乾燥前に戻ることが明らかになった。 また抵抗値はHNタイプで10-20%程度ほど乾燥したフォイル方が抵抗値が低めに製造される傾向が観測されたが、ENタイプではHNタイプほど水分量で大きな差は見られなかった。 しかしながら、製造バッチ中では抵抗値の一様性は安定しているが、バッチ毎に抵抗値にばらつきがあることも観測された。まだスパッタリングでコントロールできていないパラメータがあることを示唆しているが、これは2019年度に引き続き調査が必要である。 また、並行して試作したu-RWELL検出器の性能評価も勧めている。Fe55などの線源を用いて信号の確認には成功した。測定のための実験機材の整備は一通り終わり、更に測定を進めるための基盤も構築することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は様々な条件で高抵抗層(Diamond-like-carbon)の抵抗値の安定性やそれに係るパラメータを系統的に調査することが出来た。まだ目的の抵抗値が自在にコントロールできるところまでには至っていないが、測定手法の確立など今後更にパラメータを調査するための基盤はできつつあると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度は比較的スパッタリングがしやすい厚み(時間)を用いて系統的に乾燥条件やカプトン土台を変更して抵抗値の安定性を見たが、今後は検出器として重要になる更に高い抵抗値を実現するためにスパッタリング条件を変えて抵抗値の安定性を見ていく方針である。この際にはスパッタリング時間を変えることが最もシンプルな方法であるが、膜を薄くすると抵抗値が安定しないのは以前の研究で観測されており、炭素に窒素などの不純物を入れることで抵抗値をコントロールする方法なども検討する。バッチ間で異なる抵抗値の薄膜が製造される原因も更に詳細に調査を進める。 また、更に大型のカプトンを用いてスパッタリングを行い、抵抗値の場所一様性なども調査を行う予定である。 μ-RWELL検出器の性能評価も引き続き勧めていく予定であり、ゲイン測定などを印加電圧やガスの選択を変えて行い、系統的に調査していく。また並行してシミュレーションなどを用いた検出器パラメータの比較なども行い観測データとシミュレーションを比較して今後の検出器の改良にフィードバックをかける予定である。
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