研究課題
本研究では2つの非対称光リング共振器を用いて、回転させながらその共振周波数差を測定することで、世界最高精度での光速の異方性探査を行う。光速の異方性探査は、光子のローレンツ不変性の破れ探査に相当する。ローレンツ不変性は全ての物理学の基礎となっているが、統一理論に向けた理論的研究や宇宙観測から破れの可能性が示唆されている。これまでの光速の異方性探査は直交方向で往復する光速の差を測定する実験と光速の行き帰りの差を測定する実験に分かれていたが、本研究では両者の手法を組み合わせることにより世界初の全成分探査を行う。我々はこれまで、試作機を用いて光速の行き帰りの差に対しては世界最高精度となる6×10^{-15}の上限値を得ている。現在の精度は装置の回転に伴う雑音に制限されており、精度向上のためには振動感度が低い光学系の開発と振動の少ない回転台の開発が必要である。2018年度は振動感度の低いモノリシック光学系開発と性能評価、および回転台の大型化と性能評価を行った。モノリシック光学系は金属板の上に光学素子を接着することで光軸の高さを低くし、素子同士が一体となって振動することで同相雑音除去により振動感度を低減させた光学系のことである。性能評価の結果、十分に低い振動感度と、同相雑音除去比1/100の性能を得た。また、回転を安定化させるために光学系と測定系を全て回転台の上に載せる必要があり、回転台の大型化が必要となる。そのための回転台の開発を行った。特に回転機構の電源周りの整備を行い、安定な電源の供給に成功した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、2018年度に実施予定だったモノリシック光学系の開発と性能評価、回転台の開発が進められており、おおむね順調に進展していると言える。
これまでに開発した光学系と回転機構により、光速の行き帰りの差については精度更新が見込まれるため、2019年度は観測運転をする予定である。また、光速の異方性探査実験を人工衛星上で行う可能性についても検討を進める。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 4件、 査読あり 10件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 6件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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