研究課題/領域番号 |
18H01225
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 俊博 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (50706877)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 宇宙線 / 大気蛍光 / 極高エネルギー / テレスコープアレイ実験 / ピエールオージェ観測所 / FAST実験 |
研究実績の概要 |
次世代の極高エネルギー宇宙線観測実験を目指した開発研究として、直径1.6 mの複合鏡とその焦点面に4本の大口径光電子増倍管(直径20 cm)を設置した低コスト型の新型大気蛍光望遠鏡による宇宙線観測を続けている。本研究では、現在稼働している極高エネルギー宇宙線観測実験であるテレスコープアレイ実験(米国ユタ州)とピエールオージェ観測所(アルゼンチンメンドーサ)に同一の新型大気蛍光望遠鏡を設置し、実験間の系統誤差を調べる研究計画となっている。 現在までに、テレスコープアレイ実験に設置した3基の望遠鏡を使った宇宙線の定常観測を遠隔操作によって続けており、これまで累計515時間の夜間の観測時間を達成した。またピエールオージェ観測所への設置計画に関しては2018年11月に共同研究者会議にて設置の合意を得ることができ、望遠鏡収納用の建屋およびコンクリートパットの建設が完了した。また望遠鏡を構成する複合鏡の製作と4本の光電子増倍管の基本性能の評価が完了し、アルゼンチンへ輸送された。さらにはデータ収集用の電子回路や遠隔操作を実現するためのシャッターのコントロール用モジュールやモニター用の小型カメラも現地へ輸送が完了し、来年度には1基目の望遠鏡を設置し宇宙線の観測を開始する予定である。 データ解析では、テレスコープアレイ実験に設置した新型大気蛍光望遠鏡を使って、21 km遠方で射出される紫外線レーザー光源を解析することで時々刻々と変化する大気透明度の解析を進めている。宇宙線の観測については、新型大気蛍光望遠鏡による再構成アルゴリズムを新たに実装し、入射した宇宙線のエネルギーおよび宇宙線の質量組成に感度の高い最大発達深さ(Xmax)の解析を進めている。また、これらの研究成果は国内外の研究会やテレスコープアレイ実験およびピエールオージェ観測所の共同研究者会議で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テレスコープアレイ実験に設置された3基の新型大気蛍光望遠鏡の定常観測が順調に進んでおり、21 km先の紫外線垂直レーザー光源、そして宇宙線事象の観測およびそのデータ解析が進んでいる。またアルゼンチンへの設置計画についても、各構成要素の開発・試験および現地への輸送が完了した。来年度はじめにはアルゼンチンへの望遠鏡への設置が完了し、遠隔観測によるデータ収集を開始する予定であり、おおむね順調に研究計画が進展している。 これらの研究成果についてはテレスコープアレイ実験およびピエールオージェ観測所の共同研究者会議や、国内の物理学会や国際会議で報告しており、大気蛍光望遠鏡の専門家らとの議論のもとに研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、テレスコープアレイ実験の現場責任者であるJohn N Matthews 特任教授と週1回の定例会議を開催し、観測状況の確認を定期的に実施している。さらに月に1度の共同研究者全体の電話会議により、密な連携によって迅速に研究計画を進め、安定したデータ取得を継続する。またテレスコープアレイ実験およびピエールオージェ観測所の共同研究者会議や国内外の研究会で発表を継続することで、専門家らとの議論を通じて改善点の早期発見や解決に努める。
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