研究課題/領域番号 |
18H01231
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉岡 瑞樹 九州大学, 先端素粒子物理研究センター, 准教授 (20401317)
|
研究分担者 |
槇田 康博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (30199658)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 中性子 / ガス検出機 / 超伝導磁石 |
研究実績の概要 |
中性子は最も単純な原子核の一つであり、およそ900秒で陽子、電子、反ニュートリノに崩壊する。その寿命は素粒子標準理論およびビッグバン元素合成理論の精密検証において不可欠なパラメータのうちの一つであるが、測定手法により8.7±2.2秒と大きく乖離しており、当該分野において深刻な問題となっている。申請者は茨城県東海村の陽子加速器施設J-PARCの大強度中性子ビームを用いて、既存の手法とは異なる測定方法により中性子寿命を世界最高精度で決定する新しい実験を提案している。本実験では新型ガス検出器とソレノイド磁場を組み合わせることにより、従来最も支配的であった背景事象を大幅に低減することが可能となる。本年度は作製したガス検出器を高エネルギー加速器に輸送、超伝導ソレノイド磁石との統合試験を行い、作製したガス検出機および信号増幅器が磁場中で正常動作することを確認した。さらに、宇宙線および各種放射線源を用いた性能評価を行い、シミュレーションで期待される通りに従来支配的であった背景事象を削減できることが分かった。その後、装置群一式をJ-PARCに輸送し、ビームラインに設置した。また、作製した磁気遮蔽体をビームラインに設置し、ビームライン上での超伝導磁石の励磁試験を行った。データ収集系の整備の後、初の中性子ビーム照射試験を行い、3He吸収反応事象を観測することに成功した。しかしながら、超伝導磁石の漏れ磁場が上流光学系に影響を与えることが判明したため、次年度に対策を要する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作製したガス検出機と超伝導磁石の統合試験を行い、さらに装置群一式をビームラインに設置の上初の中性子ビーム照射試験を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は宇宙線検出器の作製・性能評価を行う。また、初の中性子ビーム照射試験により、ビームキャッチャーからくる背景事象が大きいことが分かったため、設計の見直しを行う。また、超伝導磁石の漏れ磁場が上流光学系に影響を及ぼすことが判明したため、追加遮蔽等の対策を施す。
|