研究課題
暗黒物質の直接検出は現在の素粒子・宇宙物理学の最大の課題のひとつであり、WIMP(Weekly Interactive Massive Particles)モデルに基づき世界中の多くのグループが探索実験を行っている。中でも質量~10GeVc^2 、断面積~10^-41 cm^2 付近では、発見を主張する実験(DAMA、GoGeNT等)と棄却する実験(XENON等)が混在し大きな注目を集めている(DAMA領域)。本研究の目的は、液体アルゴン(Ar)を標的とした検出器によりDAMA領域を探索することにある。液体 Ar は液体窒素より少し高い沸点 87K を持ち、密度 1.4 g/cm^3 の無色透明の液体である。Ar は大気中において窒素・酸素に次いで 3 番目に多く含まれる気体であり比較的安価なため検出器の大型化に有利である。液体 Ar 検出器の顕著な特徴としては荷電粒子の通過により“シンチレーション光”と“電離電子”の2種類の信号が生成されることにある。二つの信号を組み合わせることにより液体 Ar 検出器は非常に強力な粒子識別能力を持ち、暗黒物質による信号事象と背景事象(主にβ線)の分離が可能となる。この分離性能はArシンチレーション光(波長 128 nmの真空紫外光)の検出効率に大きく依存するため、本研究ではその向上に取り組んだ。本年度は研究の集大成として2020年8月に早稲田大学地上で暗黒物質探索実験を行った。WIMPモデルに基づき質量10 GeVの領域でWIMP-核子断面積で10^-37 cm^2まで探索した結果として検出された事象は背景事象とコンシステントであった。この検出器を背景事象の少ない地下実験室でデータを取得することにより、DAMA領域までの探索が行えることを実証した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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