研究課題
2020年度も北陸地方にて雷や雷雲からの高エネルギー放射線の観測を実施した。また、これまでに得られたデータを精査し、高エネルギー放射線事象を探査した。その結果、2020年度は以下のような成果を得た。ここ3-4年における北陸地方での雷や雷雲からの放射線観測から、雷により光核反応が起きることが分かった。光核反応では、高エネルギー(10 MeV以上)のガンマ線が大気中の窒素原子核と衝突し、中性子を発生させる。これまでの観測では、光核反応の直接的な証拠となる中性子を検出することができなかった。そこで効果的に中性子を検出できるガドリニウムが配合されたシンチレータ(GSO)を用いて観測を行うことにより、中性子を捉えることに成功した。雷による光核反応をより理解するため、光核反応にかかわる断面積(反応のし易さ)を調査し、シミュレーション(GEANT4)を用いて光核反応で作られる二次生成物の振る舞いを調べ上げた。シミュレーション結果と観測結果を比較し、われわれが2017年に発見した雷による光核反応の発生高度や光核反応に関わった加速電子数を推定することに成功した。雷からの高エネルギー放射線に加えて、雷雲そのものから数分間にわたり到来するロングバーストの観測においても進展があった。ロングバーストでは現在も、その発生にかかわる雷雲の中の加速領域の広がりやその発生高度が不明である。これがロングバーストの解明においてボトルネックとなっている。そこで、そうした物理量を推定できるコリメータ検出器を開発し、金沢市に設置した結果、2021年1月にロングバーストを捉えることに成功した。得られたデータから、従来考えられていたよりも加速領域が広がっているとともに、高度が低いことが推定された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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