研究課題/領域番号 |
18H01240
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西野 玄記 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (80706804)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CMB / インフレーション / データ収集系 |
研究実績の概要 |
本研究は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光観測実験の観測制御系・データ収集系・モニター系の高度化により観測精度を向上させることにより、未だに発見されていない宇宙の始まりのインフレーションにより生じたとされる原始の重力波の痕跡の発見やニュートリノ質量に関する宇宙論的な情報を得ることを成し遂げようとするものである。2020年度においては、研究開始時には想定できなかった新型コロナウィルスの世界的な流行のために、当初予定していた観測サイトにおける実地検証作業などが困難なものとなった。そこで、当該年度においては、日本における実験室等で検証セットアップなどを構築し、そこで観測システムの高度化に関する研究を進めてきた。 本研究の実験検証の場となっているSimons Array実験においては、新型受信機システムの2台目の導入が予定されており、本研究において、そのための新たなデータ収集系のテストを行った。長時間テストとプログラムの改良を重ねることにより、パケットロス、データ落としを無視できるまで落としたシステムを構築した。特に、CMB偏光観測実験において重要となる連続回転半波長板の回転をモニターするエンコーダの読み出しシステムに関するテストを重点的に行い、その改善を重ねた。この研究成果は現行のSimons Array実験だけでなく、次世代のCMB実験、Simons Observatoryにおいても用いられる予定である。 また、新規の環境モニター系の導入の試みとして、全地球航法衛星システム(GNSS)を用いて、地上CMB実験の主な雑音源の一つである大気中の水蒸気のゆらぎをモニターするシステムの研究を開始した。準備試験は日本国内において行われ、連続的にデータ取得ができるシステムの構築に成功し、観測サイトにおける実地試験のための準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界的な新型コロナウィルスの流行の影響を直接受け、南米チリの観測サイトにおける作業は不可能になったものの、研究実績概要で述べたとおり、日本国内にいながら可能な研究を進めることにより、観測システムの高度化の研究に関する重要な進展をもたらすことができた。当該年度後半には、Simons Array実験の観測システムの再立ち上げ、データ取得の再開もなされ、本研究の成果が順調に実観測において科学データ取得の根幹として運用され始めている。 また、想定外の事態が起こったことにより、新たな、萌芽的な研究開発を進めることにもなった。まだ実用化に向けては多くの研究が必要となるが、成功すれば当初の想定以上の成果となると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度である次年度においては、これまでの研究において開発・導入を進めてきた観測システムを用いた安定的な運用の達成と取得された観測データの解析による初期成果の発表を目指した研究を進める。 本研究の成果が運用されるSimons Array実験の1台目の望遠鏡については、既に試験観測が遂行中であり、データ解析に的を絞る。2台目の望遠鏡については、新たな受信機の導入が控えているため、観測制御・データ収集システムの実地試験を行う。現在の世界情勢を鑑みて、今後も遠隔作業によりこれらの試験を遂行することが主となることが予想される。したがって、国際共同研究の中、研究協力者らとの密な協力関係のもとに、研究を推進する。 一方、新規の大気中水蒸気量モニターシステムの実地検証も進めていく予定である。既に測定システムは南米チリの観測サイトへと輸送手配がされており、今後その運用とデータの解析を進め、実用性を検証していく予定である。
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