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2019 年度 実績報告書

超伝導接合による暗黒物質アキシオンの検出のための基盤技術開発

研究課題

研究課題/領域番号 18H01243
研究機関名古屋大学

研究代表者

柏谷 聡  名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40356770)

研究分担者 中 竜大  東邦大学, 理学部, 講師 (00608888)
田仲 由喜夫  名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40212039)
北嶋 直弥  東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50737955)
山森 弘毅  国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (00358293)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード暗黒物質アクシオン / 超伝導接合 / トポロジカル量子現象
研究実績の概要

本研究の目的は、超伝導/常伝導/超伝導(S/N/S)構造を有するジョセフソン接合が、暗黒物質アキシオンの検出器として有効に機能するかを実験的に検証することである。有力視されている100ueV/c2 程度の質量領域におけるアキシオンは検出が困難とされていたが、近年ジョセフソン接合を用いた新しい検出法が提案されている。これを実験的に検証するために、独自アイデアによるS/N/S 型ジョセフソン接合素子を開発し、精密計測を実施する。本年度はトポロジカル絶縁体上に作成したジョセフソン素子、および産総研で作成されたジョセフソン素子を用い、これらを0。5K程度の低温域でのコンダクタンスの詳細な測定を行い、Beckらにより予言されたコンダクタンスピークが観測できるかを検証した。その結果、いずれの素子においても期待されたピーク構造は現れず、結果としてはネガティブであった。前年度に観測されたコンダクタンス構造はノイズであることが明確になった。そのため、理論の詳細を洗い直し、Beckの理論ではジョセフソン周波数とアクシオン周波数が完全に一致する条件での計算を示しているが、実際の実験状況では、この条件が満たされることは難しく、そのために期待されたピークが見えていないという結論に達した。
一方理論的にはジョセフソン接合中におけるアクシオン暗黒物質の振る舞いに関する理論的基礎固めと同時にこの系を解析するための数値シミュレーションコードの開発を進めた。特に電磁場とアクシオンとの相互作用に着目し、アクシオン場のコヒーレント振動と電磁場との間に共鳴現象が起こるかどうかを調べるためのシミュレーションを開発した。その結果、ジョセフソン接合系に応用する前段階として、より単純化されたセットアップである初期宇宙における解析を査読付き論文で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コンダクタンスによる測定に関してはネガティブな結果であるが、代替の手段として接合の発する磁場に着眼することにより、非常に精度の高い測定が行える可能性が出てきており、手段としては異なっているが期初の目的に達する測定が行える可能性が高くなってきている。

今後の研究の推進方策

昨年度から行ってきた計算に基づき、アクシオンを検出するための素子を設計し、産総研の超伝導プロセスファシリティとの連携により、SQUIDを組み込んだジョセフソン素子の設計・作成を進め、周波数駆動時の磁場検出にターゲットを置いた素子デザインを採用する。これによりコンダクタンスの変化ではなく、有限電圧状態のジョセフソン素子とアクシオンとの相互作用による発生磁場を直接検出を行うための準備を整える。磁場がパル的に発生するモデルを想定し、これをラッチ方式で検出するためのSQUID設計をシミュレーションで行い、実際に作成、測定を試みる。また、新しいアプローチとして、トポロジカル物質を用いたフォトンとアクシオン変換可能性に関して、理論を整備し、予備実験を開始する。さらに、ジョセフソン接合内におけるアクシオン暗黒物質による特異な電磁気現象を理論および数値シミュレーションから探る。特にアクシオン起源の電磁場が交流ジョセフソン接合効果にどのような影響を及ぼすか、またRCJS回路に着目し、巨視的トンネル効果が背景アクシオン場の存在によりどのような影響を受けるかを微視的観点から詳細に解析する。最終的にはジョセフソン接合を用いた検出がアクシオンの理論パラメターをどの程度制限できるかどうかまでを明らかにする。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Relic Abundance of Dark Photon Dark Matter2020

    • 著者名/発表者名
      Prateek Agrawal, Naoya Kitajima, Matthew Reece, Toyokazu Sekiguchi, Fuminobu Takahashi,
    • 雑誌名

      Physics Letter B

      巻: 801 ページ: 135136

    • DOI

      10.1016/j.physletb.2019.135136

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 磁性ドープしたトポロジカル絶縁体/超伝導接合のジョセフソン電流2020

    • 著者名/発表者名
      山本將裕, 矢野力三, 廣瀬陽代, 小柳正男, 柏谷裕美, 笹川崇男, 田仲由喜夫, 柏谷聡
    • 学会等名
      日本物理学会第75回年次大会
  • [学会発表] 超伝導体に侵入した量子渦がつくる磁場の数値計算2020

    • 著者名/発表者名
      高野優之, 馬渡康徳, 矢野力三, 山本將裕, 北嶋直弥, 中竜大, 柏谷聡
    • 学会等名
      日本物理学会第75回年次大会
  • [学会発表] トポロジカル超伝導と接合系2020

    • 著者名/発表者名
      柏谷聡
    • 学会等名
      第6回ポストグラフェン研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] ジョセフソン接合による暗黒物質アクシオン探索(II)2019

    • 著者名/発表者名
      山本將裕, 矢野力三, 山森弘毅, 廣瀬陽代, 笹川崇男, 北嶋直弥, 中竜大, 田仲由喜夫, 柏谷聡
    • 学会等名
      日本物理学会2019年秋季大会
  • [学会発表] Magnetic Field Response of Josephson Junction on Magnetically-Doped Topological Insulator2019

    • 著者名/発表者名
      M. Yamamoto, R. Yano, H. T. Hirose, M. Koyanagi, H. Kashiwaya, T. Sasagawa, S. Kashiwaya
    • 学会等名
      International Conference on Topological Materials Science 2019 (TopoMat2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] Transport Properties of Magnetic Topological Insulators and its Superconducting Proximity Effects2019

    • 著者名/発表者名
      R. Yano,K. Tsumura, H. T. Hirose, M. Yamamoto, M. Koyanagi,H. Kashiwaya,Y. Asano, T. Sasagawa, S. Kashiwaya
    • 学会等名
      International Conference on Topological Materials Science 2019 (TopoMat2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] アクシオンの宇宙論と検出実験2019

    • 著者名/発表者名
      北嶋直弥
    • 学会等名
      第8回観測的宇宙論ワークショップ(東北大学)
    • 招待講演
  • [学会発表] AXION理論2019

    • 著者名/発表者名
      北嶋直弥
    • 学会等名
      ダークマターの懇談会2019
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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