研究課題/領域番号 |
18H01246
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
柴田 晋平 山形大学, 理学部, 客員教授 (90187401)
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研究分担者 |
木坂 将大 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (10639107)
榎戸 輝揚 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 理研白眉研究チームリーダー (20748123)
寺澤 敏夫 東京大学, 宇宙線研究所, 名誉教授 (30134662)
三澤 浩昭 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90219618)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中性子星 / パルサー / X線天文学 / 電波天文学 / 磁気圏 |
研究実績の概要 |
本研究では、NICERによるX線観測及び電波観測と理論計算により、どのようなパラメータの中性子星にどのような多重極磁場・トロイダル磁場が 発生し進化していくかという種族の多様性の仕組みを解明することを目指す。(1)パルサーのポーラーキャップにおける電子陽電子対雪崩のシュミレーター開発(1次元)を行った。特に、シンクロトロン放射だけでなく共鳴コンプトン散乱によって作られた光子も計算した。パルサーからの非熱的なX線は共鳴コンプトン散乱でほぼ説明可能であることがわかった。(2)本研究遂行途中に新しい発見があった。磁気圏電流による中性子星のスピンダウントルクの働き方に関する従来の理論が適切でないことがわかった(この点を指摘した論文を発表予定)。(3)X-ray観測についてはNICERのスペクトル解析を休止し、時間変動の解析を先行して進めた。マグネター、回転駆動型パルサーの両方に定常放射と思われていたものが実は時間変動性(非ポアッソン性)を持っているとの兆候を見つけた。結果は、山形大学理工学研究科修士論文(勝海文音)として発表した。 (4)2017-2019年に15回にわたって行われた電波・X線によるCrabパルサー同時観測の電波データベースを作成し、相関解析に供した。(5)国際宇宙ステーションに搭載されている NICER 望遠鏡と日本国内の電波望遠鏡でのかにパルサーの同時観測を行い、巨大電波パルスに同期したX線の増光を発見した。サイエンス誌に投稿して受理された(出版は2021年度)。また、突発的に明るくなるマグネターの NICER による追跡観測 (SWift J1818.0-1607 など)の研究も行った。(7)かにパルサーの巨大電波パルスと同時に発生するX線の増光を説明する理論モデルを構築し、巨大電波パルスが起こる環境に対する制限を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染拡大により、観測のための出張、必要機器の納品について遅れがあり、観測データの蓄積、ポーラーキャップでのカスケードのシミュレーションプログラムの開発にやや遅れが出た。一部、資金の繰越をした。 しかし、世界で初めて、Crabパルサー巨大電波パルス(Main phase)について、電波・X線の間の有意な相関を検出した。電波とX線による中性子星の同時観測が長期にわたって成功しており、新しい研究チームの形成ができている。数値シミュレーション結果をもとにした巨大電波パルスと同時に起こるX線の増光を説明するモデルを構築できた。また、中性子星内部の磁場進化を検証する方法としての中性子星の変形とそこからの重力波についても研究を行なった。以上のように、やや遅れがあるものの研究計画は全体としては概ね順調に推進されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、研究テーマの内、理論においては、ポーラーキャップのカスケードシミュレーターの開発に重点を置いて研究を研究を進める。観測においては、X線との相関解析に使われた電波データベースは2GHz帯のものであった。望遠鏡の仕様上、2GHzと同時に観測されていた8GHz帯データで得られた巨大電波パルスは総数が少なくX線との相関解析には不向きであるが、観測総時間は約100時間に達し、世界的に貴重な資料である。この解析により、これまで解析例が3例ほどしかなく、同時多波長特性の殆ど知られていないX帯巨大電波パルスの特性を今後明らかにする。Fast Radio Burst (FRB) のマグネター起源説に感心が寄せられており、かにパルサーやマグネターの研究を FRB の観測的研究にも応用していきたい。観測結果と理論的解釈をもとにして得られた中性子星磁気圏環境への制限をもとに、その領域でのプラズマのダイナミクスの調査を進めていきたい。最終年度に向けて、成果の論文等での発表にも力を注ぐ予定である。
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