研究課題/領域番号 |
18H01247
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
須藤 靖 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90183053)
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研究分担者 |
石渡 正樹 北海道大学, 理学研究院, 教授 (90271692)
河原 創 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90649758)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 系外惑星 / リモートセンシング / 天体力学 / バイオシグニチャー / 大気大循環モデル |
研究実績の概要 |
本年度予定していた4つの具体的なテーマとその結果は以下の通りである。 1) ブラックホールと恒星の連星系に対して、その恒星の動径速度時間変化から、その内側のブラックホールが単独ではなく連星である可能性を探るため、天体力学の3体問題の摂動論を応用した解析的近似式と実際の数値計算を組み合わせて、内側のブラックホール連星のパラメー タを推定する方法論を構築した。さらに、永年摂動法を用いない直接粒子シミュレーションを用いて、それらの軌道不安定性を考察中である。 2) 星の測光光度曲線からその自転周期を推定し、星震学と組み合わせることで、星の自転傾斜角を推定する研究に関しては、ケプラー衛星が観測した92個の太陽型恒星を選び出し、それらに対する測光的周期解析と星震学による周期推定を系統的に比較した。その結果、測光的周期は時間的に変動する場合が多く、それは表面の黒点の力学進化を示唆していることを結論した。一方で、1割程度は長期間にわたり安定した周期が得られるため、微分回転に対する強い制限が得られることがわかった。 3) ALMA望遠鏡で観測されている複数の原始惑星系円盤のダスト分布を初期条件として、それから生まれる複数惑星系を数値的に計算した。その結果、ほとんどは安定した系であり、ホットジュピターのような系は生まれないことがわかった。これは、観測されている円盤系がそのような遠方で大きな惑星を生むものにバイアスされている可能性と、その円盤に対する外的摂動の効果を無視したことに起因する可能性が考えられる。 4) 地球の表層データを用いて、太陽に対する自転傾斜角を変化させた10個程度の大循環シミュレーションを実行し、リモートセンシングの模擬観測を行うテーマに関しては、時間的に実行できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3体問題の応用としての、ブラックホール連星の検出可能性については予想通り進捗している。さらに、原始惑星系円盤が近傍の円盤との3体系をなし、その後の流体力学的進化を通じて、逆行回転する場合があることを流体シミュレーションから発見した。これらは、現在さらなる研究へと進展しつつある。 リモートセンシングの模擬観測については、それを行なっていた学生が卒業したため更にすすめることができなかった。現在、それに関しては、今後どのようにすすめるかを検討中である。 一方で、星の微分回転の効果を、トランジット惑星を含む系のロシター効果を通じて検証する方法論と、星の光度曲線の測光的時間変動を用いて黒点分布から推定する方法論の理論的提案について、当初の予定以上の進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
1) 今まで行なってきたブラックホール連星を含む3体の観測可能性に関連して、それらの力学的軌道不安定に至る時間スケールが、数値シミュレーションで系統的に調べ、特にそれらが第3体の公転周期、離心率軌道面傾斜角にどう依存するかを調べる。 2) 惑星系の進化において、3体系に起因する摂動効果のみならず、近傍の他の惑星系からの摂動を考慮するため、粒子法による流体シミュレ ーションを用いて、原始惑星系円盤と主星の角運動量輸送進化を計算する。 3) 星の光度変化の周期性から自転周期を推定する方法論が広く用いられているが、それは黒点の分布と性質に依存して必ずしも、真の自転周期に対応するとは限らない。そこで恒星表面上の黒点による光度曲線変動の解析的モデルを与え、特に、星の微分回転がどのような観測的信号を生み出すかを考察し、その 観測可能性を議論する。
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