研究課題
2018年度は[CII]アレイ分光器の電気インターフェースの整備を開始した。インド気球望遠鏡側の電気システムと整合させるために、アレイ検出器読み出し回路のデジタルデータ出力部の製作した。検出器アレイの性能を評価するために低温真空試験を行ったが。その際に、分光器に搭載しているアレイ検出器の暗電流が高いという問題が発覚したため、計画を延長し、2019年度は原因究明と検出器の再製作を行った。まず、インド現地で共同研究者との打ち合わせを行い、技術的課題と今後の方針を確認した。これまでの実験データなどを精査した結果、暗電流の増加は、検出器の半導体ブロッキング層が薄過ぎることによる構造上の問題であるとの結論に至った。そこで、平面展開型の新しい半導体の構造を採用することで、実質的にブロッキング層が厚くできることに着目し、検出器の再製作を実施した。なお、この検出器は別用途で開発されたものであり、それを代用する形をとったため、再製作のための追加の経費は不要であった。新しいアレイ検出器システムへの組み上げを完了したのちに、低温での動作試験を実施した。その結果、検出器の25素子の全チャンネルにおいて、暗電流については問題の無いレベルに改善されていることが確認された。気球観測中の背景バックグラウンドに伴う光電流よりも低くなるため、この性能であれば、今後、予定通りの気球観測が行えることを確認した。一方、既存の分光器を用いた[CII]気球観測を2018年10月にインドハイデラバード気球観測所で実施し、良好な科学データが取得できた。その後、ファブリペロー駆動機構のコイルが断線するという問題が発生した。その修理のために日本に戻していたシステムを解体し、コイルの不具合を取り除いたうえで、光学調整を行い、システムを再構築した。低温での分光器の性能評価を行ったうえで、インドへ出荷するという作業を実施した。
3: やや遅れている
アレイ検出器側の問題は解決できたが、分光器側に新たな問題が発生した。具体的には、予想されていた波長分解能が達成できないことであり、これは光学系の設計上の問題あるとの結論に至っている。そのため、再製作が必要である。分光器システムとしての組み上げを2019年度中に行えなかった。
ファブリペロー分光器の整備を終え、アレイ検出器と組み合わせてシステムを再構築し、総合評価試験を実施する。低温真空試験を行い、電気系・光学系が正常に動作すること、感度・ノイズが観測要求を満足するレベルにあることを実証する。現在、コロナウイルスの影響により、インドへの輸送および渡航ができない状況であるが、事態が改善し許可が出れば速やかにインドへ観測装置を輸送できるように準備する。
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Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 71 ページ: id.6
10.1093/pasj/psy126
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 57 ページ: pp.116701
10.7567/JJAP.57.116701