研究課題
2018年度に発覚したアレイ検出器のリーク電流の技術課題について、現在の半導体アレイ設計の構造パラメータを見直し、再製作を行った。低温動作試験にて評価した結果、リーク電流の大幅な改善が確認された。この結果が観測データの性能にどのように影響するかを詳細に見積もり、問題がないとの結論を得た。その後、この検出器を現行の機器に改めてインストールし、分光器システムを再構築・再評価を実施したが、波長分解能が期待される性能を有していないことが発覚した。原因を調査した結果、ファブリペロー光学系の設計に問題があるとの結論に至り、関連する光学系部品の再設計・再製作を行った。一方、従来[CII]ファブリペロー分光器による大質量星形成領域の観測データが大量に蓄積されつつある。2019年度はその解析ソフトを完成させた。現在、IDLベースから汎用性の高いPythonへ移行を進めている。そのための技術補佐員を雇用した。Herschel衛星による遠赤外線データ、および、「あかり」衛星による中間赤外線データと、本研究による[CII]気球観測データを組み合わせた解析手法を確立した。観測天体のなかで、まずはRCW36に関する成果をまとめて査読付きジャーナルに投稿した(現在、レフェリー対応中)。また、他の複数の天体についても、インド側の共同研究者との活発な議論を行い(2020年2月に名古屋大学で会合を開催)、成果をまとめるための具体的な方針の合意を得た。なお、2019年4月にインド・ハイデラバードで気球実験を実施した。放球には成功したが、観測途中で分光器の駆動コイルが断線する不具合が発生した。そのため、分光器を日本へ送り返してコイルを新しく置き換え、光学系を再調整してインドに輸送した。2020年3月に気球観測を行う予定で準備を進めたが、コロナウイルスの影響で断念した。
3: やや遅れている
ファブリペロー光学系の設計に問題があり、予定していた波長分解能が出せないという不具合が発生した。そのため、関連光学系の再設計・製作を行った。また、コロナウイルスのためにインドへ渡航することが不可能になり、予定していた気球実験が実施できなくなった。
整備を終えたファブリペロー分光器とアレイ検出器のシステムを再構築し、総合評価試験を速やかに実施する。低温真空実験を行い、電気系・光学系が正常に動作すること、感度・ノイズが観測要求を満足するレベルにあることを実証する。コロナウイルスの事態が改善し許可が出れば速やかにインドへ観測装置を輸送できるように準備する。現地での機械・光学・電気の噛み合わせを行い、 気球望遠鏡システムとして正常に動作することを、現地の技術者との共同作業で実証する。地上試験はできるだけ速やかに終わらせて、2020年度中の気球観測を目指す。また、データ解析ソフトをアレイデータに対応させるべく、現行のものに汎用性を持たせる改良を行い、現地での観測中のQuick Lookにも使えるものにグレードアップする。まず、大質量星形成領域RCW36に関する論文を発表し、他の天体についても、インドとの協力により、速やかに成果をまとめ、論文の準備を進める。
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Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 72 ページ: id.5
10.1093/pasj/psz123