本研究計画において、中国の新しい太陽電波望遠鏡MUSERと日本の野辺山電波へリオグラフを用いて、「太陽フレアにおける粒子加速」と「太陽フレアに伴う振動現象」について、新しい知見を得ることを目的とし、研究を進めてきた。 もともとは、中国のMUSERグループの研究者を日本へ招聘、もしくは、研究代表者が中国を訪問し、データ解析手法に関する情報交換や解析結果に関する議論を行う予定であったが、新型コロナウィルスの影響で、結局、実現できなかった。 そういう事情もあり、研究期間後半においては、研究テーマ「太陽フレアにおける粒子加速」の中で、当初から一番の重点課題に挙げていた「どこで電子は加速されるのか」という問いに答えることに重点を置き、電波や硬X線など多波長のデータを用いて、イベントスタディを行った。これらの研究活動には、研究代表者が指導する名古屋大学の大学院生も加わった。野辺山電波へリオグラフの高時間分解能観測の特性を活かして、高速でフレアループに沿って伝播する比熱的電波源の観測から、その電波を放射する元となっている高エネルギー電子のループに注入された際の初期ピッチ角情報や注入場所・方向などの情報を引き出すことに成功した。また、別のイベントスタディでは、硬X線の高時間分解能データのTime-of-Flight解析により、太陽コロナ中の電子加速場所の高度の時間発展についての情報を引き出せる可能性を示す研究を行った。これらの研究成果については、複数の国際学会を含む学会・研究集会等で随時、報告を行った。
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