研究課題/領域番号 |
18H01254
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研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
磯部 洋明 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 准教授 (90511254)
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研究分担者 |
海老原 祐輔 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (80342616)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 太陽フレア / 宇宙天気 / 太陽活動 / 黒点 / 歴史文献 / オープンサイエンス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、歴史文献中に記述されている天体現象、特にオーロラと黒点の観測記録から、過去の太陽活動および宇宙天気現象の変遷を探ることである。 今年度の成果としては、まず18-19世紀の巨大磁気嵐の記録の調査を行い、観測史上最大と言われていたいわゆるキャリントンイベントに匹敵するイベントが相当の頻度で起きていることを複数例で実証したことが挙げられる。この成果はすでに2本の論文として出版されている。また、放射性同位体などの解析から、キャリントンフレア以上のいわゆるスーパーフレアが起きた可能性がある西暦775年前後のオーロラ記録に関する史料の吟味を進め、当該の放射性同位体イベントがスーパーフレアであったという確証を得るには至っていないものの、新たな知見を得て論文にまとめている。また、太陽活動が極端に低調であった17世紀から18世紀にかけてのいわゆるマウンダー極小期と呼ばれる時期に日本と中国でオーロラらしい同時観測があることが以前から知られていたが、本研究で同時期のヨーロッパにおける黒点記録との照合を行い、実際にその時期には大フレアを起こしうるような巨大黒点がなかったこと、またオーロラの観測緯度から地磁気嵐の強さがDst indexで-300nT以上となることを明らかにした。この現象の説明を与えるために、Dst Indexの経験的な時間発展モデルを用いて、同程度の地磁気嵐が、黒点のない静穏領域にあるフィラメント噴出を起源とするコロナ質量放出で説明できることを明らかにした。この成果は論文出版受理の状態である。加えて、研究協力者が所属する機関等と協力して、市民参加型で歴史文献から天体現象を含む過去の自然現象の記録を探すイベンを開催し、その報告と考察を論文として出版している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
太陽物理学としての成果が計4本の査読付き論文として出版ないし受理済みである。また、市民参加型イベントについては、近年注目が集まっているオープンサイエンスの文脈において、本研究の主目的である歴史文献を用いた太陽物理学がどのようにオープンサイエンスの流れに貢献し、またそこからフィードバックを得られるかについても考察を行い、論文を出版することができた。17-18世紀の現象のサーベイが想定以上に成果を挙げたことに加え、2年次以降に予定していた理論モデリング研究にも着手できたこと、オープンサイエンスという新しい学術的文脈への展開ができたことから、当初の計画以上の進展と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き広範な史料の渉猟と吟味を継続歯痛つ、今後は、いわゆる文献史料と現代的な観測をつなぐような、19世紀末から20世紀初頭にかけての太陽および地磁気観測データの活用にも研究を展開する。具体的には、京都大学花山天文台を始め、世界の天文台で観測され、ガラス乾板やフィルム写真としてデータが残っているもののうち、デジタル化が終わっているものを中心に分析を進める。
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