本研究の目的は、歴史文献中に記述されている天体現象、特にオーロラと黒点の観測記録から、過去の太陽活動および宇宙天気現象の変遷を探ることである。 最終年度である本年度は、自然科学的成果から歴史学研究、および学際領域へのフィードバックについて検討・実施した。自然科学・歴史学双方が共同で「日本における低緯度オーロラ観測」について、自然科学と歴史学の両方の視点からオーロラ記録等の史料を分析することで得られる歴史学にとっての新たな知見について、歴史学の研究会で共同で発表し、論文にまとめた。また、アーカイブ天文学、シチズンサイエンスといった観点からも学会発表を行った。これらの成果は書籍の分担執筆、歴史学の論文として成果となっている。シチズンサイエンスの観点からはCOVID-19の流行により前年度より続けていたアマチュア天文家による太陽黒点観測データの取りまとめが部分的になったが、そのデータを利用して学会発表を行った。データベース天文学の観点からは、前年度出版した論文の理論計算をもとに、太陽活動極小期における宇宙天気現象について約100年前の太陽撮像写真乾板を調査し、極小期で黒点が非常に少ない時期といえども地磁気嵐を引き起こす太陽活動が起こりうることを見出した。国内だけでなく海外の太陽撮像写真乾板アーカイブの担当者とも連携誌継続的な調査を行っている。科研費の執行としては本年度で終了するが、引き続きデータの整理、研究成果発表を行っていく。
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