研究課題/領域番号 |
18H01261
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研究機関 | 特定非営利活動法人日本スペースガード協会(スペースガード研究センター) |
研究代表者 |
奥村 真一郎 特定非営利活動法人日本スペースガード協会(スペースガード研究センター), スペースガード部門, 主任研究員 (40344270)
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研究分担者 |
柳沢 俊史 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (20371106)
酒向 重行 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90533563)
吉川 真 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (70311173)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 太陽系小天体 / 地球接近天体 / 高速移動天体 / 重ね合わせ法 / CMOSカメラ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小サイズの地球接近天体(NEO)を多く検出しそのサイズ分布に制限を与えることにより、太陽系小天体の軌道進化や起源を解明する事である。小さいNEOは地球に近づいた時でないと検出できる明るさにならないが、地球に近づいた際は相対移動速度が大きくなるため露出中に検出器の素子間を移動し、感度低下をまねく(「トレイルロス」)。 東京大学木曽観測所で開発を進めてきたカメラ「Tomo-e Gozen」(以下、Tomoeカメラ)は検出素子を84枚並べて直径9度の範囲をカバーする超広視野カメラである。CMOSの採用により高速読み出しが可能であり、一素子あたりの視野が広いため高速移動天体に対しても「トレイルロス」の影響を受けにくい。また、JAXAで開発された「重ね合わせ法」は多数枚の短時間露出画像を様々な移動方向・移動速度を仮定してずらしながら足し合わせるものであり、同様に「トレイルロス」の影響を受けずに深い感度を達成できる。 Tomoeカメラによる高速読み出しデータは「重ね合わせ法」を適用するのに最適である。これら二つの技術要素を組み合わせる効果により高速で移動する微小なNEOの検出を可能にし、直径数十mサイズの小天体を数多く発見する事によって上述の目的達成を目指す。 Tomoeカメラは2019年4月に全84チップの搭載が完了し、観測が進められている。2018年度の試験観測でNEOを1つ発見、2019年度には検出アルゴリズムの改良により、本研究の主要部分である「重ね合わせ法」の適用を待たずして10m-20mクラスのNEOを8個発見し、高速移動天体に対する高い観測能力を証明した。一方「重ね合わせ法」の方は、Tomoeカメラを使った基幹プログラムである突発天体高頻度サーベイ観測のデータ処理に最適化する改良・改修をすすめ、このシステムを木曽観測所に導入するための準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Tomoeカメラについては全84枚のCMOSセンサのうち4分の3にあたる63枚が2018年度に搭載され、さらに2019年度に残り21枚の搭載も完了し、順調に開発が進んでいる。重ね合わせ法についてもTomoeカメラのデータに最適化する改修を予定通り進めてきた。2019年度末に重ね合わせ法のシステムを木曽観測所に導入する予定であったが、新型コロナウイルスの影響により木曽観測所への出張機会が失われたためこの作業が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナの騒動が一段落したところで、なるべく早急に木曽観測所に重ね合わせシステムを導入する。導入後は84枚のCMOSデータのうち少なくとも21枚分についてはリアルタイム処理ができるようになる予定である。今年(2020年)秋の観測好機までに導入を完了させ、その後は観測を進めながら後処理のプロセスにおける課題(候補天体が見つかった際のフォローアップ、軌道の決定と人工天体との識別、など)についても検討し、自動処理できるシステムの構築を目指す。
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