研究課題
直径10m前後の微小な天体を多く発見することは、小天体の形成・進化を議論するためのサイズ分布の情報につながる。このサイズの天体を観測するには、地球に接近し高速移動する地球接近天体(以下、NEO)を狙うしか選択肢がない。高速移動天体は露出中に検出器の素子間を移動してしまう「トレイルロス」効果の影響を受け、CCDを用いて長時間露出する観測では検出が難しい。本研究で開発を進めてきた東京大学木曽観測所Tomo-e Gozenカメラはこのような移動天体の観測に適しており、テスト観測中であった2019年3月に地球接近天体2019FAを発見したのを皮切りに、2023年3月までに49個のNEOを発見した。Tomo-e Gozenで発見されたNEOには10m前後のサイズのものも含まれているが、検出限界は約17等にとどまっている。本研究はさらに暗い、さらに小さいサイズまで含めてNEOを大量発見しようというものであり、様々な移動方向・移動速度を仮定してずらしながら重ね合わせる「重ね合わせ法」をTomo-e Gozenカメラのデータに適用することにより検出限界を深め、0.5秒露出の画像1枚からは検出が難しい微小な高速移動NEOの大量検出を目指してきた。これまでに専用計算機を木曽観測所に導入、プログラムの改修・最適化を進め、84枚の検出器のうち半分の42枚分であればリアルタイムに近い速度で処理できるシステムを構築した。大量に検出される人工天体については、カタログを参照し既知のものは同定できるシステムを組み込んだ。本研究課題の最も重要な部分となる、検出した候補天体の軌道を定めるための即時追跡観測は美星スペースガードセンターを用いて2022年5月に追跡観測に成功した。今後はGPUマシンを木曽観測所に導入して処理能力を向上させ、84枚のデータ処理がリアルタイムで可能となるような改修を計画している。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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