研究課題/領域番号 |
18H01265
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究 |
研究代表者 |
成田 憲保 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, アストロバイオロジーセンター, 特任准教授 (60610532)
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研究分担者 |
生駒 大洋 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80397025)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 太陽系外惑星 / 小型惑星 / トランジット / TESS / 多色同時撮像カメラ / ディフューザー / 惑星大気 / 視線速度 |
研究実績の概要 |
本研究では、天王星・海王星より小さな質量・半径を持つ太陽系外の「小型惑星」に着目し、その周期・質量・半径・大気といった性質を観測によって明らかにしていくとともに、観測結果を理論的に解釈し、小型惑星の形成・移動や大気、内部構造といった知見を深め、小型惑星の基本的性質を理解していくことを目指している。2019年度は主に以下の3つの研究に取り組んだ。 (1) 岡山1.88m望遠鏡のMuSCAT、スペイン・テネリフェ島のTCS1.52m望遠鏡のMuSCAT2などの多色同時撮像カメラを用いて、TESSのサーベイなどで発見された惑星候補の追観測を行った。その結果、新たに10個の新しい小型惑星を発見し、それらの周期・質量・半径などの性質を明らかにした。新しく発見された小型惑星の中には、惑星表面に液体の水が存在しうるいわゆるハビタブルゾーンに位置するものも3つ含まれていた(GJ 357 d、Teegarden's star bとc)。 (2) すばる望遠鏡のインテンシブ観測が採択され、赤外視線速度測定装置IRDの観測時間を9夜確保した(S19A-069I)。この観測時間を使って、MuSCATやMuSCAT2で本物の惑星であることが確認できた赤色矮星まわりの小型惑星の質量の測定に取り組んだ。 (3) 昨年度詳細に検討した円盤ガス獲得による原始大気形成および岩石との反応による水生成の効果が、最終的な惑星半径と軌道周期の分布に与える影響を評価するため、微惑星集積・ガス集積・惑星移動・円盤ガス散逸・大気散逸等を組みあせた統合モデル(いわゆる惑星種族合成モデル)を開発した。結果として、特に従来よりも小型惑星が多量の大気を保持することになり、従来モデルに比べて大きな半径を持つ惑星の存在が予言された。この予言を検証するため、小型惑星の大気観測もサイエンスに含め、すばる望遠鏡のインテンシブ観測の継続を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時に開発的研究の項目として挙げていたトランジット観測用ディフューザーの開発と設置は、2019年度までに完了した。 TESSで発見されたトランジット惑星候補の追観測などにより、申請時の目標としていた20個以上の新しい小型惑星の発見が2019年度までに達成でき、その中には3個のハビタブルゾーンに位置するものも3つ含まれていた。 理論側からも小型惑星の形成や大気の獲得についての統合モデルが出来上がり、新しく発見された惑星に対する予言や実際の観測結果との比較ができるようになった。今後は特に、観測によって小型惑星の質量と大気を特徴付けて、理論予言との比較に取り組んでいく予定である。 以上のように、観測と理論の連携が取れるようになり、当初目標としていたことの多くが2年目までに達成できている。さらに赤色矮星まわりの小型惑星の探索の過程で、赤色矮星まわりの褐色矮星・巨大惑星候補を発見するなど、当初予期していなかった成果も得られている。 以上のことを総合的に判断して、2年目の時点で当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は引き続きTESSで発見された惑星候補の追観測から新しい小型惑星を発見していくとともに、発見された小型惑星の質量と大気のさらなる特徴付けを進めていく。その観測結果との比較を通して、本研究で開発してきた惑星形成の統合モデルを検証し、当初の目的通り小型惑星の基本的な性質を明らかにし、理解していく。
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