本科研費により,反射率測定装置の測定波長を長くすること(3.2ミクロン),および,ナノ秒パルスレーザの更新を行い,リュウグウを想定して炭素質シミュラント、石炭およびCM炭素質コンドライトへのレーザ照射実験を行った。一見すると同じような黒い物質でも、紫外可視域から近赤外域の反射スペクトルは異なる。200nmから測定したが、リュウグウのスペクトルに確認された紫外域のアップターンは確認されていない。ただし、弱いレーザーを安定して出すことが難しく、別予算で、レーザー光のアッテネーターを導入した。 また、太陽からの紫外線を長時間浴びると、表面の鉱物の反射スペクトルが変化することが知られている。この効果を調べるために、新たにキセノンランプによる紫外光源を導入して真空下での照射実験を行った。カンラン石のペレット試料への照射で短時間で可視域の反射スペクトルが減少することが確認されている。 リュウグウ表面の岩石の割れ目が南北方向に卓越するという事を、100枚以上の近接画像から得た500個以上のクラックの分布から確認した。ストレート型、蛇行型、途中停止型、複雑型にクラックを分類したが、(衝突が原因と考えられる)複雑型以外は南北方向に走るクラックが多い。リュウグウの自転軸はほぼ直立しており(自転軸傾斜角172度)日照の加熱の変化は、東西方向の非対称としてあらわれ、南北方向の亀裂を生むと考えられる。また,周期的な加熱により,岩塊にタマネギの皮がむけるように球殻状に割れ目が入る,Exfoliationという現象が報告されているが,リュウグウにはそのように解釈できる割れ目も存在する。 はやぶさ2の画像・高度計によるリュウグウの形状モデルから、YORP効果を計算して自転軸傾斜角を含むリュウグウの自転パラメーターの変遷を制約することに成功している。
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