研究課題/領域番号 |
18H01268
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
瀬戸 雄介 神戸大学, 理学研究科, 講師 (10399818)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | コンドリュール |
研究実績の概要 |
コンドリュールの形成に関して様々な理論に基づくモデルが提案されているが、原始惑星円盤を模擬(無容器、還元雰囲気)することは技術的に困難な点が多く、再現実験による研究報告は十分ではない。そこで本研究では、新たな加熱溶融法として、縦型管状炉・ガス浮遊法・レーザー加熱法を組み合わせたハイブリッドシステムの開発に挑戦している。当該年度では、ノズル部分のテストを重点的に行った。安定した浮遊状態を達成するためには、ガスを噴出するノズルの形状、穴の直径、ガスの流量などのパラメータを調整することが重要である。ノズルの製作は、本科研費で導入した光造形3Dプリンタを用いた。様々な形状をテストした結果、円錐角90度、穴の直径1mm程度の形状がガス流量に関わらず安定した浮遊状態を達成することが分かった。光造形3Dプリンタで造形可能な材質はプラスチックであるため、実際の部品はCNCフライス盤でアモルファスカーボンを加工し製作した。これを用いて1500度の高温状態で浮遊溶融実験を行ったところ、ケイ酸塩物質や金属などを実際に浮遊させることが出来た。また、サブミクロンレベルで均質な化学組成をもち、真球上の出発物質(ケイ酸塩が主体)を作成することに取り組んだ。具体的には、アルコキシドと酸溶液を重縮合させて目的化学組成のゲルを作成した後、強熱して微細な粉末にした。さらにこの粉末を昨年度に導入した転動造粒装置によって真球状に加工した。このようにして得られた出発物質をハイブリッド炉に導入し、浮遊の安定性や溶融に伴う形状変化を評価した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
縦型管状炉本体および浮遊ガスの導入部分はすでに稼働しており、最高1500℃の状態で動作可能である。レーザー加熱については、常温状態であればレーザー光を試料部に集光することは容易であるが、高温の場合に気体の対流や揺らぎによってレーザーの集光点が定まらない問題がわかっている。そのために、導入するガスの流量の一定化やガスを予備的に加熱するなどの工夫を行っている。ノズル形状の最適化については、さらに安定浮遊する条件を模索している状況である。また、転動造粒法で作成した出発物質については、粒度分布にばらつきがあることや材料強度が低いことが分かっているので、これについては、転動造粒装置の形状の最適化、造粒促進剤の変更、焼結プロセスの改良を行う必要がある。試料を昇降するパンタグラフシステムについては、テスト中にモーターが損傷したため、より耐久度の高いものに交換する予定である。なお、ここで述べた問題点のいくつかは昨年度に解決すべきものであったが、昨年度は新型コロナウィルス感染症の感染拡大によって実地での研究作業が制限された影響があり、装置を実際に用いたテストが不十分であった。以上のことを総合的に判断して、「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
まず昨年度に引き続き、本科研費で導入した光造形3Dプリンタを用いて、出発物質(粉末)を実験前にあらかじめ球状に成型する転動造粒装置を最適化する。転動造粒装置は回転速度、回転角度、液体/粉末混合比など、多くのパラメータがあり、最適な条件を見つけるため試行錯誤的な実験を繰り返す。また、レーザー出力とガス流量を連続的かつ高速に変化させるために、シリアル通信のインターフェースソフトウェアおよびマイコン回路を設計・開発する。安定した浮遊条件を達成するために、流体シミュレーションによるノズル穴径や風量の最適化を行うことも検討している。さらに、本科研費で導入したファイバーレーザー加熱システムについて、出射位置から試料に至るまでのミラーとレンズの口径・枚数・焦点距離を含む幾何学設計を行い、集光サイズや照射角度を最適化する。浮遊状態にある試料はハーフミラーを介して超長焦点のCCDカメラでモニタリングされているが、この映像をコンピューターヴィジョンによってリアルタイム解析するソフトウェアシステムを開発することも検討する。開発した各システムを実際に縦型管状炉に導入し、縦型管状炉・ガス浮遊法・レーザー加熱法を組み合わせたハイブリッドシステムの完成を目指す。年度の後半では実際にこのシステムによって作成した浮遊溶融試料の電子顕微鏡観察を行う。試料は表面観察を行った後、切断研磨して内部断面の微細組織観察および化学組成分析を行う。特に、コンドリュール楕円球の形状・コンドリュール中のケイ酸塩鉱物あるいは金属鉱物の粒径や形状、ケイ酸塩鉱物と金属鉱物の鉄成分の分配などに注目する。これらの結果と天然のコンドリュールの組織を比較し生成条件を検討するとともに、得られた成果を学術学会や学術論文上で発表する。
|