コンドリュールとは、45.6億年前の太陽系形成初期に形成した球状の物質であり、原始惑星系円盤において付着成長した固体微粒子の集合体が瞬間的な加熱イベントによって部分的あるいは完全に溶融した後、急速な冷却によって形成したと考えられている。ただし、原始惑星円盤を模擬(無容器、還元雰囲気)することは技術的に困難な点が多く、再現実験による研究報告は十分ではないという現状があった。そこで本研究では、新たな加熱溶融法として、縦型管状炉・ガス浮遊法・レーザー加熱法を組み合わせたハイブリッドシステムの開発を試みた。 最終年度では、昨年度に引き続きガスを噴出するノズルの形状・穴の直径・ガスの流量などのパラメータ最適化を行った。また、レーザー加熱の出力を調整するプログラムや、観察光学系の再調整を行った。さらに、出発物質としてアルコキシドと酸溶液を重縮合させてゲル粉末を作成し、転動造粒によって真球状に加工した。これらの作業によって、ケイ酸塩物質や金属などを安定的に浮遊させることに成功した。回収した試料は、光学顕微鏡による表面観察の後、切断研磨して断面を電子顕微鏡を用いて観察および分析した。冷却速度を10^3 K/hrから10^5 K/hrの範囲で変化させたが、全体がガラス状態で凍結される確率(約40%)には大きな変化は見られなかった。また、結晶化した試料の内部組織を解析した結果、棒状カンラン石コンドリュール(平板上のカンラン石が一定方向に配列する組織)や、斑晶状カンラン石コンドリュール(自形のカンラン石の集合組織)などの天然組織を再現することに成功した。
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