今後の研究の推進方策 |
岡田は,完成させた冷却ガスセルを動作させ,様々な緩衝ガス種を導入することによって,極性分子ガスの凝縮がなるべく起こらないガス圧・ガス種を探索していく。具体的な極性分子としてND3, CH3CNを用い,緩衝ガスにはHe, Ne, Ar, Xe, 窒素, CO, CH4などの導入を試みる。また,Ne+ + CH3CN反応に対して,反応速度定数の回転温度依存性の測定を行う。一方,改良を加えた飛行時間質量分析計の性能評価を行う。具体的には,レーザー誘起反応によって生成可能なCaO+分子とCa+の混合クーロン結晶を生成し,CCDカメラによって取得したCa+クーロン結晶のレーザー誘起蛍光画像からCa+とCaO+のイオン数を同定したのち,その混合クーロン結晶の飛行時間信号を測定し,イオン数と飛行時間信号の相関測定を行う。この実験手法の確立によってイオン極性分子反応の分岐比測定のための基盤を確立する。 崎本は,引き続きイオン-極性分子衝突系に関する理論的研究を継続する。具体的には,イオンと極性分子の形状共鳴散乱について,分子が回転励起状態にある場合を考える。分子が基底状態にあると,断熱ポテンシャルによるシングルチャネル問題として共鳴現象を扱うことができた。しかし,励起状態だと多チャンネル問題になることが避けられない。この場合に共鳴現象がどのように理解できるのかさらに考察を進めていく。 南部は,CH3CN-N2H+反応系に加えてCH3CN-Ne+反応系に対しても力場や電荷分布を決め,古典分子動力学シミュレーションで初期エネルギー分布を決定する。その後,独自開発したab initio 分子動力学シミュレーションプログラムに初期条件を代入し動力学計算を行う。さらに異なる乱数を用いて決定した初期条件に対して同様の反応計算を繰り返すことで反応の分岐比を求めていく。
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