研究課題/領域番号 |
18H01274
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
阿部 琢美 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (40255229)
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研究分担者 |
渡部 重十 北海道情報大学, 経営情報学部, 教授 (90271577)
齊藤 昭則 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10311739)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電離圏 / プラズマ / イオンドリフト / イオン密度 / 飛しょう体 |
研究実績の概要 |
平成30年度前期はイオン密度・ドリフト速度測定器の基本構成に関し設計と数値シミュレーションによる検討を行うことで研究を開始した。測定器の構成として、当初の計画通りセンサ部の前段にRPA(Retarding Potential Analyzer)、後段には電流収集用コレクタ電極を配置するものを第1次案として考えた。数値シミュレーションでは、空間に測定器内部の電位分布を表現し、ある速度と温度をもつ分布関数で表されるイオンが外部から測定器に対し入射した場合の各々のコレクタ電極の電流値の計算を行った。 入射角度、ドリフト速度、温度等のパラメータを様々な値に変化させた場合の各コレクタ電極での電流値を計算し、それらの電流値から逆にパラメータの推定が可能かについて検討したところ、コレクタ電極構成の当初案とした16枚の扇形平板では推定精度が十分とは言えない結果を導く可能性があることがわかった。電極構成について様々な形状を検討した結果、電極は平板ではなく半球の内面に設置するほうが有利で、枚数も当初案の16枚から大幅に増やし72枚にするべきであるとの結論を得た。この変更に伴い1枚の電極で得られる電流値の減少が予想されることから、半球の半径は約60 mm程度にすることとした。 平成30年度後期には上に述べた測定器のセンサRPA部の基本設計およびコレクタ電極に関する数値シミュレーションの結果を受けて、センサ部構造を決定し、業者に対して発注、基本部品の調達を行った。また、検討結果をもとに電極に流れる電流の増幅率、速度等のパラメータを推定するために必要なデータ送信レート等を計算して、測定器の電気回路部に要求される仕様を決定した。このようにして導いた仕様を満たす電気回路部を業者に対して発注し、年度内に調達を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度前期に測定器センサ部のコレクタ電極の電流値に関する数値シミュレーションを行ったところ、得られた結果の一部に予想外のものがあったため、最終的な結論を得るまでに計画よりも時間を要した。これはイオンドリフト測定器開発のために参考にしてきた文献では、人工衛星に搭載された場合のデータ例が多く、観測ロケットに搭載された場合の測定器データの参考例が少なかったことに関係している。すなわち、人工衛星は飛翔速度が早いためにイオンの入射方向は比較的単純な仮定で考えられるのに対し、観測ロケットは相対的に飛翔速度が遅くイオンの見かけ上の速度が遅く入射方向により電極電流の変化が大きく異なってしまうため、コレクタ電極の構成が大きく異なるためである。 このような理由により、センサ部の電極配置の構成や配置の決定が予定に比べて遅くなってしまった。電極やRPA部試作のための部品発注も遅れたため、当初予定では30年度内に終了するはずであったコレクタ電極部の組み立ては完成していない状況にある。平成31年度前期はこの遅れを取り返すよう、研究を加速する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は30年度に調達した部品をもとにまず測定器センサRPA部およびコレクタ電極部の試作を行う。また、両者を組み上げた後、収納するためのケースの設計と製作を行い、最終的にセンサ部の試作品を完成させる。 次にRPA部とコレクタ電極部を含むセンサ部を真空チェンバー内に設置し、電気回路部を使用して実験データの取得を行う。チェンバー内には低エネルギーのイオンの流れを生成し、センサ部を回転台の上に設置し測定器の向きを変更しつつデータを取得することでドリフト速度決定精度の評価を行う。その結果を受けて、より良い精度の測定器の製作に向けた検討を行うことになろう。 イオン流の生成については、参考となる文献は多数あるものの測定対象のエネルギーが低いために、順調に進まない可能性があるかもしれない。この場合は時間をかけて更なる検討を行い、実現すべきイオン流を生成できるようにする。 31年度後期にはこれらの評価の検討結果を受けて電気回路部の改修を行う可能性がある。センサ部についてはグリッド電極の配置や印加電圧、寸法等に更なる変更を加える必要があるかもしれない。電気回路部については評価の結果を反映させて回路の変更および最適化のための修正が考えられる。
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