研究課題
日本-オセアニア間および日本-北米間を航行する定期コンテナ船上での系統的な大気採取および日本上空とシベリア上空での航空機による系統的な大気採取を継続するとともに、北極ニーオルスン基地、北極チャーチル基地、南極昭和基地での定期的な大気採取も継続し、北極域から南極域におよぶCO2濃度とその安定炭素同位体比(delta 13C)およびO2濃度の時空変動の実態を明らかにした。さらに、ニーオルスンと昭和基地に設置した連続観測装置を用いたCO2濃度およびO2濃度の詳細な時間変動も明らかにした。本研究によって求められたCO2 の濃度および同位体比のデータやO2濃度データに加え、米国スクリップス海洋研究所および海洋大気庁地球システム研究所、国立環境研究所から関連データの収集を行い、地球規模のデータセットを作成した。作成されたデータセットの詳細な解析を行い、地球規模におけるCO2 濃度、O2 濃度、delta 13Cの時空間変動を明らかにした。得られたデータを用いて人為起源CO2の海洋および陸上生物圏による吸収量を推定するためのモデルの改良を進めた。さらに化石燃料燃焼起源のCO2排出量を求めるために、北極ニーオルスン基地で採取された大気や航空機によって採取された日本上空の大気に含まれる放射性炭素同位体(delta 14CO2)の分析も進めた。ニーオルスンにおけるO2、CO2、CO濃度連続観測値とdelta 14CO2観測値を用いて、CO2濃度に見られる短周期変動に着目し、CO2濃度上昇イベントをもたらした空気塊のラグランジュ粒子拡散モデルによるフットプリントと、経済統計値から作成されている化石燃料起源CO2放出量の推定値分布を用いて、CO2濃度上昇イベント時のCO2濃度上昇幅を計算し、化石燃料起源CO2放出量の推定値分布の妥当性について評価を行った。
2: おおむね順調に進展している
北半球高緯度の北極域から南半球高緯度の南極域までの全球スケールの二酸化炭素濃度観測が順調に進められた。また、船舶や航空機などの機動的な手段や地上基地においてグラブサンプリングによって採取された世界各地の空気試料を用いて、二酸化炭素の炭素同位体比や酸素濃度の分布や変動の観測データも順調に蓄積することができた。また、これらの観測データを活用したモデルシミュレーションに用いるための3次元大気化学輸送モデルおよび陸上生態系モデルの改良を順調に進めた。2021年3月29日に年度末研究打合せをオンラインで実施した。
日本とオセアニア間および日本と北米間を航行する定期コンテナ船上、北極ニーオルスン基地、北極チャーチル基地、南極昭和基地、日本上空とシベリア上空での航空機による系統的な大気採取と試料分析を継続し、広域にわたる大気中のCO2・O2 濃度およびdelta 13C のデータを蓄積する。さらに北極ニーオルスン基地で採取された大気や航空機によって採取された日本上空の大気に含まれる放射性炭素同位体(delta 14CO2)の分析も継続する。全球3次元大気化学輸送モデル(ACTM)を用いた高解像度のインバージョンスキームの開発と、ACTMに組み込むためのdelta 13CとO2濃度の計算モジュールの開発を進め、観測から得られたデータを使って地球規模炭素循環を定量化する。また、全球陸上生態系モデルを高度化し、CO2のdelta 13Cの分布も推定できるように改良する。さらに、生態系モデルによって与えられるCO2フラックスおよびdelta 13Cを、大気化学輸送モデルによる推定結果と比較する。その結果を踏まえて、モデルのパラメータ最適化やベースマップの妥当性の検討を行う。
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