研究課題/領域番号 |
18H01276
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 薫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90251496)
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研究分担者 |
村田 功 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (00291245)
冨川 喜弘 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (20435499)
齋藤 芳隆 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (50300702)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スーパープレッシャー気球 / 大気重力波 / 南極 |
研究実績の概要 |
本課題は、南極でのスーパープレッシャー(SP)気球観測により、大気重力波の運動量フラックスの水平分布・確率密度分布を取得し、南極昭和基地大型大気レーダー(PANSY)で得られる運動量フラックスの時間高度断面と組み合わせることで、南極域における大気重力波による運動量輸送の3次元的描像を得ることを目的としている。 2019年度は、基板の設計に必要な基板間の通信内容の決定、イリジウム通信用アンテナの選定等を行った後、基板のファームウェアの設計を実施した。これと前年度に実施したスーパープレッシャー気球に搭載する観測装置の設計・試験結果に基づき、観測装置を試作した。 また、現状のSP気球の気密性能を評価し、運用計画を立てるため、既存のSP気球を1,200 Paに加圧し、圧力の変化を調べたところ、280時間にわたり正圧が保たれることがわかった。 研究分担者らが開発・運用している国立極地研究所粒跡線モデル(NITRAM)と過去の気象データを用いて、南極夏季における気球の航跡計算を行った結果、気球は南極大陸上空を離れ、南米大陸上空等に飛来する可能性があることがわかった。今後、関係する各国と気球飛翔の可否について調整を行う。 上記とともに、放球方法の検討、飛翔中のフライトコントロールとQLシステム、取得データの解析システムに関する検討を進めている。 また、SP気球観測により得られるデータと比較するための基礎情報として、PANSYの過去データを用いた大気重力波の間欠性に関する解析、主に重力波の砕波に伴い発生すると考えられる乱流強度の解析等を並行して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で使用するSP気球搭載観測装置は、重量を3kg以下に抑え、ICAO(国際民間航空機関)のルールで軽気球として扱えるシステムとすることで航空管制による制限を緩和する方針で設計・製作されている。そのため、従来のフランスを中心とした国際キャンペーン観測(重量20kg以上)とは異なり、ATCトランスポンダー(指定波長の電波の送受信により、自身の位置情報を周辺の航空機に知らせ、かつ周辺の航空機の位置情報を入手する機器で、通常数kg程度)の搭載は必要ない。しかし、2019年7月に開催されたATCM(南極条約協議国会議)において、南極で運用するすべての航空機・無人機・気球にADS-B out system(指定波長の電波の送信により、自身の位置情報を周辺の航空機に知らせる機能のみを持つ機器で、数百g以下程度)の搭載を義務付ける提案(working paper)が英国から出され、8月のCOMNAP(南極観測実施責任者評議会)の航空機安全に関する分科会で議論された。基本的に南極はICAO圏外のため法的な効力を持つルールはないが、各国が協議しながらICAOに準拠し、かつ航空機の運用を認可した国の法規に沿って運用するとともに、南極の状況にカスタマイズしたATCM・COMNAPで合意されたルールにも従っている。そのため、本観測でも観測装置にADS-Bを搭載することとした。それに伴い、新たに観測装置にADS-Bを搭載するための技術的検討や、航空機IDを取得するなどの法律的対応を行う必要が生じたため、南極での本観測実施を1年延期した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度中に観測装置にADS-Bを取り付けるための技術検討と航空機IDの取得を行う。2021年度前半には、今年度製作した試作機にADS-Bを取り付け、北海道での国内試験観測を実施した後、実機を製作し、2021年度後半に南極での本観測を実施する予定である。
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