研究課題/領域番号 |
18H01281
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
時長 宏樹 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (80421890)
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研究分担者 |
RICHTER INGO 国立研究開発法人海洋研究開発機構, アプリケーションラボ, グループリーダー代理 (20649470)
小坂 優 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (90746398)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海盆間相互作用 / 大気海洋相互作用 / 熱帯大西洋 / 熱帯太平洋 / 気候変動予測 |
研究実績の概要 |
本研究は、経年から数十年規模の熱帯大西洋-太平洋間相互作用の要因とそれらの気候影響の解明を目指している。2019年度は主に(1)春季における赤道太平洋・熱帯北部大西洋の相互作用の解明、(2)海面水温平均状態に対する熱帯大西洋-太平洋海盆間相互作用の依存性の解明、を目指すと同時に、(3)大西洋-太平洋海盆間相互作用の気候モデルによる再現性を CMIP6 のマルチモデル相互比較によって検証した。 (1)に関しては、観測データを用いた解析と全球大気海洋結合モデル SINTEX-F を用いた海面水温感度実験を行った。赤道太平洋におけるエルニーニョ/南方振動は、冬季から春季にかけて同符号の海面水温偏差を熱帯北大西洋にもたらす。反対に春季以降は、熱帯北大西洋が弱いながらも逆符号の海面水温偏差を赤道太平洋に形成する効果があることを明らかにした。本研究成果は国際学会や論文で発表済みである。(2)に関しては、既に異なる海面水温の平均状態を仮定した感度実験を実施済みであり、今後解析を進める予定である。(3)に関しては、CMIP6 piControl 実験および HighResMIP control-1950 実験を用いて、気候モデルによる大西洋-太平洋間相互作用の再現性を評価・検証し、論文として投稿、改訂中である。 さらに関連研究として、熱帯太平洋十年規模気候変動に伴う北極域の気候変動のメカニズムについて解析を行った。本解析では、両者の相関における太平洋-大西洋海盆間結合の役割を明らかにし、その成果を4つの国内外の学会において発表した (うち3つは招待講演)。また、北極-ユーラシアの冬季気候連関について、熱帯大西洋からの遠隔影響がそれらを駆動する可能性を提示する論文を発表した。その他、研究代表者・分担者ともに熱帯大西洋や海盆間相互作用に関するレビュー論文および書籍を共同執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載した研究成果の多くは、論文として投稿あるいは掲載済みとなっており、国内外の学会にて発表を行なっている。また、2018年度に投稿していた論文も2019年度に正式に掲載されている。以上の理由から、本研究課題は概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は概ね順調に進んでおり、基本的には当初の計画通り研究を実施する。昨年度の実績報告書で記載したように、本研究では大西洋-太平洋間相互作用について、複数の大気海洋結合モデルを用いた相互比較を行うことを計画している。その国際的な枠組みとして、気候変動及び予測可能性研究計画(CLIVAR)の研究焦点であるTropical Basin Interaction へ、研究分担者の Ingo Richter (共同議長) と研究代表者の時長 宏樹 (メンバー) が参画することが決まっている。この研究焦点では、世界各国の気候研究者が参画しており、熱帯海洋の海盆間相互作用について多角的に研究を推進していくことが計画されている。2020年以降は、このような国際共同研究を通して、CMIP6 のマルチモデル相互比較研究を強化し、さらにすでに実施されている熱帯太平洋/熱帯大西洋のペースメーカー実験等を解析することにより、本研究課題に取り組む予定である。
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