研究課題/領域番号 |
18H01284
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
鈴木 直弥 近畿大学, 理工学部, 教授 (40422985)
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研究分担者 |
高垣 直尚 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (00554221)
早稲田 卓爾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30376488)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 風の海面摩擦係数の変動 |
研究実績の概要 |
大気・海洋間運動量フラックス算出に用いられる風の海面摩擦係数一般的に風速のみの関数で表されているが、海洋観測での風速に対する風の海面摩擦係数は大きく変動している。本研究の目的は、風波水槽・ブイ・観測塔を用いて観測を行い波浪や風速変動の影響を明らかにすることで信頼性の高い風の海面摩擦係数モデルを構築することである。2021年度の成果は以下の通りである。 (1)風波水槽での風波と成分波混在時の解析:成分波混在によって風波の卓越周波数が変化し、成分波の周波数が大きく波高が高いほど風波のスペクトル形状を変化させ、風波に影響を及ぼすことが示された。また、一様流速および境界層内の風速鉛直分布に相違が生じ、風の海面摩擦係数および摩擦速度の値が大きくなることが示された。 (2)風波水槽での風波と表層流混在時の解析:風波と同一方向の表層流混在の場合、液流速が大きくなると風波の卓越周波数も大きくなり風波の発達を抑制していることが示された。同じ液流速の場合でも風速が大きくなると表層流の影響は小さいことが示された。また、境界層内の風速鉛直分布に相違が生じ、摩擦速度および風の海面摩擦係数が小さい値を取ることが示された。 (3)風速・風向変動の影響の解析:東京大学所有の平塚沖総合実験タワーでの観測データから風速・風向の安定時間による風の海面摩擦係数の変動について調査した。その結果、50分以上風速・風向が安定することで風の海面摩擦係数の変動が小さく既往研究の風の海面摩擦係数モデル付近にデータが集中することが示された。また、瞬間値データ内において風向変動が特に低風速域で風の海面摩擦係数の変動に影響していることが示された。異なる時間間隔の全球規模海上風速再解析データを用いて大気・海洋間運動量フラックスを算出し検討した結果、局所では高風速時に異なる時間間隔による風速変動の影響が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、コロナ禍で予定していた小型大気乱流・波浪同時計測ブイを用いた観測を行うことができなかったが、風波水槽実験を行うことで、(1)風波と同一方向の表層流混在時の解析を行い、表層流が混在することで境界層内の風速鉛直分布に相違が生じ、摩擦速度および風の海面摩擦係数が小さい値を取ることが示された。(2)風波と成分波混在時の解析を行い、一様流速および境界層内の風速鉛直分布が異なる傾向を示すことが示された。また、風波のみに比べて風の海面摩擦係数および摩擦速度の値が大きくなることが示された。 また、蓄積したタワーでの観測データの解析を行い、瞬間的な風向変動が特に低風速域で風の海面摩擦係数の変動に影響していることが示された。また、風速変動の考慮として異なる時間間隔の全球規模海上風速再解析データを用いて大気・海洋間運動量フラックスを算出した結果、高風速時に異なる時間間隔による風速変動の影響が示された。 したがって、現場での観測を行うことができなかったが、風波水槽実験および蓄積していたタワー観測データ、全球規模海上風速再解析データを用いた解析を行うことができ、当初の計画通りにおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでコロナ禍の影響で観測が行えなかった小型大気乱流・波浪同時計測ブイを用いた観測回数を増やし、様々風速でのデータを取得し、解析を行う。また、風波水槽実験においては成分波・表層流を生成する条件を増やし、風の海面摩擦係数の変動の影響について定量的な解析を行う。タワーでの観測データにおいては、これまで短期間の観測データについて検討してきたが、今後は蓄積された長期間データを用いて、時系列および瞬間的な風速・風向変動、さらには高風速での風速変動について、より詳細に解析を行う。風速パラメータのみでなく波浪パラメータも同時に解析を行い、風の海面摩擦係数の変動におよぼす波浪の影響について検討していく。さらには、風の海面摩擦係数におよぼすうねりや表層流の影響について平塚沖総合実験タワーと風波水槽実験の結果を比較し、詳細に検討する。上記解析によって、風の海面摩擦係数の変動の要因の知見をより明らかにし、信頼性の高い風の海面摩擦係数モデルを提案する。
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